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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… A
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まかした。

 それから一分くらい歩くと、街灯ひとつない暗い川辺に人だかりができている。

「わぁ、スゴい人……」

「うん。愛美ちゃん、はぐれないように手を繋いでおこうか」

「……はい」

 愛美はそっと頷き、彼が差し伸べてくれた手を取った。その手の大きさ、温もりがすごく力強く感じる。

「キレイ……! 純也さん、ホタルってこんなにキレイなんですね……」

 あちらこちらで、黄色くて淡い光がすぅーっと飛び交っていて、明かりのないこのエリアを(はかな)げに照らしている。

「知ってる? ホタルって、亡くなった人の(たましい)が生まれ変わったものだって言われてるんだ」

「はい。何かの本で読んだことがある気がします」

 だからホタルの寿命は短くて、その命は儚いのかもしれない。

「もしかしたらこの中に、君の亡くなった両親もいるかもしれないね」

「純也さん……。うん、そうかもしれませんね」

 今からここで純也さん(好きな人)に想いを伝えようとしている我が子の背中を押すために、彼らはここにいるはずだ。

(……告白するなら今だ! 今なら言えるかもしれない)

 そして、彼の優しさに心動かされた愛美は、繋いだ手に少し力を込めた。

「……? 愛美ちゃん?」

「――純也さん、わたし……。あなたのことが好きです。出会った時から、初めて話をしたあの時からずっと」

 途中で一度ためらって、それでも最後まで言葉を(つむ)いだ。
 初めての告白だし、ちゃんと伝えられたかどうかは分からない。ちゃんとした告白になっているかどうかも分からない。でも、今の彼女に言える精一杯の気持ちを言葉にした。
 
「純也さん……?」

 彼の顔を直視できずに(というか、ヒールを履いているとはいえ四十センチ近くもある身長差のせいで見えないのだ)告白したけれど、彼からの返事が早く聞きたくて、愛美はもう一度呼びかけてみる。

「僕も好きだよ、愛美ちゃん」

「…………えっ?」

 彼の表情が見えない。聞き間違いかと思い、愛美は訊き返す。

「好きなんだ。君と初めて言葉を交わしたあの時から……多分ね」

 すると純也さんは、今度は愛美の目をまっすぐ見てはっきり言った。「好きだ」と。

「ホントに?」

「ホントだよ。僕がこんなことでウソつける男かどうか、愛美ちゃんも知ってるだろ?」

「それは……知ってますけど。だってわたし、十三歳も年下で、まだ未成年ですよ? それに、姪の珠莉ちゃんの友達で――」

「それでもいい。好きなんだ。だから、僕と付き合ってほしい」

 愛美はまだ信じられなくて、純也さんが断りそうな理屈を引っぱり出してみたけれど、それでも彼は引かなくて
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