暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… @
[1/15]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 ――愛美たちの原宿散策から一ヶ月が過ぎ、横浜は今年も梅雨入りした。


「――愛美、あたしこれから部活だから。お先に」

 終礼後、スポーツバッグを提げたさやかが愛美に言った。

「うん。暑いから熱中症に気をつけてね」

 梅雨入りしたものの、今年はあまり雨が降らない。今日も朝からよく晴れていて蒸し暑い。屋外で練習する陸上部員のさやかには、この暑さはつらいかもしれない。

「あら、さやかさんもこれから部活? 私もですの」

「アンタはいいよねー。冷房の効いた部室で活動できるんだもん」

「そうでもないですわよ? お茶を()てるときのお湯は熱いし、着物も着なくちゃならないから」 

 珠莉は茶道部員である。さすがに活動のある日、毎回和装というわけではないけれど、定期的に()(だて)を開催したりするので、大変は大変なのだ。

「へえー、そういうモンなんだぁ。どこの部も、ラクできるワケじゃないんだねー。――愛美も今日は部活?」

「ううん。文芸部(ウチ)は基本的に自由参加だから、わたしは今日は参加しないよ」

「え〜〜〜〜、いいなぁ。……じゃあ行ってくるね」

「うん。行ってらっしゃい」

 親友二人を見送り、自分も教室を出ようと愛美が席を立つと――。

「相川さん、ちょっといいかしら?」

 クラス担任の女性教師・上村(うえむら)早苗(さなえ)先生に呼び止められた。
 彼女は四十代の初めくらいで、国語を担当している。また、愛美が所属している文芸部の顧問でもあるのだ。

「はい。何ですか?」

「あなた、今日は部活に参加しないのよね? じゃあこの後、ちょっと私に付き合ってもらってもいい? 大事な話があって」

「はあ、大事なお話……ですか? ――はい、分かりました」

(大事な話って何だろう? まさか、退学になっちゃうとか!?)

 愛美は頷いたものの、内心では首を傾げ、イヤな予感に頭を振った。
 
(そんなワケないない! わたし、退学になるようなこと、何ひとつしてないもん!)

 とはいうものの、先生から聞かされる話の内容の予想がまったくできない愛美は、小首を傾げつつ彼女のあとをついて行った。


   * * * *


「――相川さん、ここで座って待っていてね。先生はちょっと事務室でもらってくるものがあるから」

「はい」

 通されたのは職員室。上村先生は、その一角の応接スペースで待っているように愛美に伝えた。

(……事務室でもらってくるものって何だろ? ますます何のお話があるのか分かんない)

 愛美は言われた通りにソファーに浅く腰かけ、一人首を捻る。
 事務室といえば、管理しているのは生徒の名簿や成績や、学
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ