暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… @
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いだし」

 さやかも昼食に手を付け始めた。ゴハンよりも先に、愛美が絶賛したチキンカツレツに箸が伸びる。

「あ、ホントだ。コレ美味しい! ――そっか。もしかしたら、告白するチャンスかもしんないもんね。頑張れ、愛美」

「うん。ありがとね、さやかちゃん。……ところで、珠莉ちゃんはなんであんなに不機嫌なの?」

 愛美とさやかがおしゃべりに盛り上がる中、珠莉は不気味なくらい静かだ。

「さあ? っていうか珠莉、チキンあんまり食べてないじゃん。サラダも」

 見れば、珠莉はゴハンとスープばかりを口にしている。サラダも、トマトはのけてレタスとキュウリしか減っていない。

「珠莉ちゃん、食欲ないの?」

「そんなんじゃないの。……私、トマトが苦手なのよ」

「あれま。調理の人に言えば、タルタルソースに替えてもらえたのに。サラダのトマトは自分でのけられるにしてもさぁ」

「その手がありましたわね! 私、さっそくソースを替えてもらってきますわ!」

 途端に珠莉の顔色が明るくなり、彼女は踊るような足取りで調理室前のカウンターまで飛んで行った。

「知らなかったなぁ、珠莉がトマト苦手だったなんて。……で、何の話だっけ?」

 さやかが珠莉の背中を目で追いながら、しみじみと呟いた。
 三人の付き合いはもう一年以上になるけれど、まだまだ知らないことがたくさんあるもので。愛美も頷いた。

「夏休み、わたしは純也さんに告白するチャンスかもって話。――ちなみに制服なのは、午後から部活に出るから」

「あ、ナルホドね。だからカバン持ってきてるんだ。部屋に寄らずに直で来たワケね」

「うん。……あ、珠莉ちゃん戻ってきた」

 珠莉はタルタルソースがかかったチキンカツレツのお皿を手にして、嬉しそうなホクホク顔でテーブルに戻ってきた。

「お待たせしましたわ〜〜♪ こちらの方がカロリーは高そうですけど、まあいいでしよ」

 そう言いながら、コッテリしたタルタルソースがけのお肉を美味しそうに食べ始める。

「……よっぽど苦手なんだね、トマト」

「トマトのソースの方が、絶対サッパリして食べやすいだろうにね」

 愛美とさやかは、珠莉に聞こえないように囁きあった。

「――ところで、二人は今日、部活は?」

 愛美が訊ねる。さやかも珠莉も、すでに制服から着替えている。

「あたしも午後から部活だよ。でもまあ、部屋でスポーツウェアに着替えて直行できるから」

「茶道部は今日、お休みですの」

「そうなんだ」

 どうりで、珠莉がのんびりしているわけだ。愛美は納得した。

「でもさぁ、あたしはやっぱ夏休み返上で寮に居残り決定だよ。インハイの予選、順調に勝ち残ってるから。嬉しいんだけ
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