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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… @
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…。田中さんが呆れてらっしゃるかな……と思って」

 ここ一年近く、特にこの数ヶ月の手紙は、もうほとんどが純也さんについての内容で埋め尽くされていた。愛美自身、ノロケっぱなしで胃もたれしそうなくらいなのだ。

 すると、久留島さんは笑いながらこう答えた。

『呆れているご様子はなかったかと存じます。むしろお喜びでございますよ。「小説家になるうえでの想像力を養うにも、恋はした方がいいから」と。お嬢さんくらいの年頃でしたら、好きなお(かた)がいない(ほう)が不思議だ、ともボスは申しておりました』

「そう……ですか」

『はい。ですから、何もボスの機嫌を伺うようなことはなさらなくても大丈夫でございますよ。思う存分、青春を(おう)()なさいませ。――では、千藤農園にはこちらから連絡させて頂きますので。突然のお電話、失礼致しました』

「はい、ありがとうございます」

 電話が切れると、愛美はスマホの画面を見つめたまましばらくその場に立ち尽くした。

(おじさま、わたしに好きな人がいることが嬉しいなんて……。どうしてだろう?)

 純也さんが自分の知り合いで、信頼できる人だから? それとも――。

「まさか、本人だから……?」

 そういえば、『あしながおじさん』ではジュディの好きな人とあしながおじさん≠ェ同一人物だった。――でも、いくら何でもそこまで同じだと考えるのはベタすぎる。

「……なワケないか。行こ」

 一人で納得して呟き、愛美はスマホをポケットにしまって、食堂に向けてまた歩き出した。


   * * * *


「――愛美ー、こっちこっち!」

 食堂に着くと、奥の方のテーブルからさやかが手を振ってくれた。もちろん、珠莉も一緒である。
 ちなみに、今日の昼食メニューはチキンカツレツとサラダ、そして冷製ポタージュスープだ。チキンカツレツにはトマトベースのソースがかかっている。

「ゴメンね、遅くなっちゃって」

「いや、別にいいんだけどさ。どしたの? っていうかなんで制服?」

 愛美が謝りながらテーブルに着くと、さやかは怒っている様子もなく、彼女が遅れて来た理由を聞きたがった。
 愛美は食事をしながら、それを話し始める。

「ん、このチキンカツレツ美味しい! ――教室を出ようとしたら、上村先生に呼び止められて。奨学金申請の手続きが無事終わった、って。――あとね、スマホにおじさまの秘書さんから電話がかかってきたの」

「秘書さんから? どんな用件で?」

「書類がちゃんと着いたかどうかの確認と、今年の夏休みはどうしますか、って。わたしは今年も去年とおんなじように、長野の農園でお世話になるつもりだって答えたよ。今年は純也さんも来てくれるみた
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