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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… @
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『意外、とおっしゃいますのは?』

「わたし、田中さんに反対されると思ってたんです。奨学金のことも、わたしが大学に進むことも。だって、田中さんにしてみたら、『自分はもう、保護者としてお払い箱なのか』って思うかもしれないでしょう? 自分には頼ってくれないのに、大学には進みたいのかって。それって、自分でも勝手だなと思ってるんで」

 将来的に、出してもらったお金を返すつもりだということは、久留島さんにも言わないことにした。それが万が一あしながおじさん≠フ耳に入って、今の関係がこじれてしまうのはイヤだから。

『いえいえ、そんなことはございませんよ。ボスの一番の望みは、お嬢さんが有意義で充実した学校生活を送られることなんです。奨学金がその役に立つなら、ボスに反対する理由はございません』

「はい……」

『大学へお進みになることもそうでございますよ。お嬢さんが本気で小説家を目指しておいでなのでしたら、ぜひ大学へも進まれるべきだとボスは申しておりました。学費を出す必要がなくなっても、できることは何でもするから、と』

「そうですか。――あの、わたし、奨学金で学費が要らなくなっても、毎月のお小遣いは頂くつもりでいるので」

 奨学金で学費や寮費は賄われても、個人的に必要な細々した生活費などまでは面倒を見てくれない。
 愛美だって今時の女子高生なのだ。欲しいものもそれなりにあるし、趣味に使うお金も必要になる。そうなるとやっぱり、お小遣いは必要不可欠だ。

『さようでございますか! では、ボスにそのように伝えますね。――ところでですね、もうすぐ夏休みでございますが、今年はいかがなさいますか?』

「ああ、それならもう決まってますよ。今年も、長野の千藤農園さんにお世話になろうと思ってます」

『かしこまりました。では、そのようにこちらで手配しておきます。どうぞ、楽しい夏休みをお過ごし下さい』

「ありがとうございます。……あの、一つお訊きしたいことがあるんですけど」

『はい、何でございましょうか?』

 愛美にはずっと気になっていることがあった。自分に好きな人ができたことについて、あしながおじさん≠ヘどう思っているんだろう? と。

「わたし今、好きな人がいるんですけど。そのことで、田中さんはあなたに何かおっしゃってましたか? グチでも何でもいいんですけど」

 世の中の父親は、娘に彼氏ができることが面白くないらしいと聞いたことがあった。
 あしながおじさん≠ヘいわば、愛美の父親代わりである。やっぱり、娘のような愛美に好きな男がいることは面白くないのだろうか?

『いいえ、特には何も申しておりませんでしたが。なぜでしょう?』

「わたしからの手紙、このごろその人のことばっかり書いてるので…
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