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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… @
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費・寮費などのお金関係。

(おじさまに限って、学費の振り込みが(とどこお)ってるなんてことはなさそうだしなぁ)

 あしながおじさん≠ヘ律儀な人だと、愛美もよく知っている。間違いなく、この学校の費用は毎月キッチリ納められているだろう。
 ということは、それ関係の話ではないということだろうか?

「――お待たせ、相川さん。あなたに話っていうのはね、――実は、あなたに(しょう)(がく)(きん)の申請を勧めたいの」

「えっ、奨学金?」

 思ってもみない話に、愛美は瞬いた。

「ええ、そうよ。あなたは施設出身で、この学校の費用を出して下さってる方も身内の方じゃないんでしょう?」

「え……、はい。そうですけど」

 上村先生(この先生)は何が言いたいんだろう? 保護者が身内じゃないなら、それが何だというんだろう?

「ああ、気を悪くしたならゴメンなさい。言い方を変えるわね。……えっと、あなたは入学してから、常に優秀な成績をキープしてるわ。そしてあなた自身、『いつまでも田中さんの援助に頼っていてはいけない』と思ってる。違うかしら?」

「それは……」

 図星だった。愛美自身、あしながおじさん≠ゥらの援助はずっと続くわけではないと思っていた。いつかは自立しなければ、と。
 そして、ちゃんと独り立ちできた時には、彼が出してくれた学費と寮費分くらいは返そうと決めていたのだ。

「この奨学金はね、これから先の学費と寮費を全額(まかな)える金額が事務局から出るの。大学に進んでからも引き続き受けられるから、保護者の方のご負担も軽くなるんじゃないかしら。大学の費用は、高校より高額だから」

「はあ……」

 大学進学後も受けられるなら、愛美としては願ったり叶ったりだ。大学の費用まで、あしながおじさん≠ノ出してもらうつもりはなかったから。そこまでしてもらうくらいなら、大学進学を諦める方がマシというものである。

「まあ、一応審査もあるから、申請したからって必ず受けられるものでもないんだけれど。あなたの事情や成績なら、審査に通る確率は高いと思うの。これが申請用紙よ」

 上村先生はそう言って、ローテーブルの上に一枚の書類を置いた。

「あなたが記入する欄だけ埋めてくれたら、あとは事務局から保護者の方のところに直接書類を郵送して、そこに必要事項を記入・捺印(なついん)して送り返して頂くから。それで申請の手続きは完了よ」

「分かりました。――わたしが書くところは……。あの、ペンをお借りしてもいいですか?」

「ええ、どうぞ」

 愛美は上村先生のボールペンを借りて、本人が記入すべき箇所(かしょ)をその場で埋めていく。

「――先生、これで大丈夫ですか?」


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