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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
恋する表参道♪ A
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「――はい、愛美ちゃん。カフェオレでよかったかな?」

 純也さんは、途中の自動販売機で買ってきた冷たい缶コーヒーを愛美に差し出す。自販機ではクレジットカードなんて使えないので、もちろん小銭で買ったのだ。
 愛美は紅茶も好きだけれど、カフェオレも好きなので、ありがたく受け取った。

「ありがとうございます。いただきます」

 プルタブを起こし、缶に口をつける。純也さんも同じものを買ったようだ。

「――愛美ちゃん、お目当ての本、見つかってよかったね」

「はい。純也さんは何も買われなかったんですか? 読書好きだっておっしゃってたのに」

 書店で商品を購入したのは愛美だけで、純也さんは本を手に取るものの、結局何も買っていないのだ。

「うん……。最近は仕事が忙しくてね、なかなか読む時間が取れないんだ。それに、このごろはどんな本を読んでも面白いって感じられなくなってる。昔は大好きだった本でもね」

 悲しそうに、純也さんが答えて肩をすくめる。――大人になると、価値観が変わるというけれど。好きだったものまで好きじゃなくなるのは、とても悲しいことだ。

「じゃあ、わたしが書きます。純也さんが読んで、『面白い』って思ってもらえるような小説を」

「愛美ちゃん……」

「あ、もちろん今すぐはムリですけど。小説家デビューして、本を出せるようになったら。その時は……、読んでくれますか?」

 この時、愛美の中で大きな目標ができた。大好きな人に、自分が書いた本を読んでもらうこと。そして、読んだ後に「面白かったよ」って言ってもらうこと。目標ができた方が、夢を追ううえでも張り合いができる。

「もちろん読むよ。楽しみに待ってる。約束だよ」

「はい! お約束します」

 この約束は、いつか必ず果たそうと愛美は決意した。

「――それにしても、純也さんってよく分かんない人ですよね」

「え……? 何が?」

 唐突に話が飛び、純也さんは面食らった。

「だって、ブラックカードでホイホイお買いものするような人が、ちゃんと小銭も持ち歩いてるんですもん。確か、交通系のICカードもスマホケースに入ってましたよね」

「見てたのか。――うん、今日も電車で来た。僕はできるだけ、人並みの生活≠するようにしてるんだ」

「人並みの生活=c…?」

 愛美は目を丸くした。人並み以上の生活≠ェできている人が、何を言っているんだろう?

「うーんと、僕の言う人並みの生活≠チていうのはね、世間一般の常識からズレない生活ってこと。コンビニで買いものしたり、自炊したり、公共の交通機関を利用したり。車の運転もそう。――金持ちだからって、世間知らずだと思われたくないんだ。特にウチの一族は、一般の常識からはズレ
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