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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
恋する表参道♪ @
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いでよねっ! 珠莉、愛美、行こっ」

「うん。治樹さん、じゃあまた」

「またね〜、愛美ちゃん」

「治樹さん、またどこかでお会いしましょうね」

 兄に対して冷たいさやか、あくまで礼儀正しい愛美、なぜか治樹さんに対して愛想のいい珠莉の三人娘は、純也さんに連れられてミュージカルが上演される劇場まで歩いて行った。


   * * * *
 

「――ゴメンねー、愛美。お兄ちゃん、まだ愛美のこと引きずってるみたいで……。みっともないよねー」

 劇場のロビーで純也さんが受付を済ませている間に、さやかが愛美に謝った。
 珠莉は受付カウンター横の売店で飲み物を買っているらしい。――ついでに気を利かせて、愛美たちの分も買ってきてくれるといいんだけれど。

「ううん、いいよ。わたしも、あんなフり方して申し訳ないなって思ってたの。あんなにいい人なのに」

「愛美……」

「もちろん、わたしが好きなのは純也さん一人だけだよ。治樹さんは、わたしにとってはお兄ちゃんみたいなものかな」

 純也さんは幸い離れたところにいるので、聞こえる心配はないだろうけれど。愛美はさやかだけに聞こえる小さな声で言った。

「……そっかぁ。コレでお兄ちゃんが、キッパリ愛美のこと諦めてくれたらいいんだけどねー」

「うん……。――あ、戻ってきた」

 愛美とさやかが顔を上げると、純也さんと珠莉が二人揃って戻ってきた。珠莉は自分の分だけではなく、ちゃんと人数分の飲み物を持って。

「お待たせ! もう中に入れるけど、どうする?」

「叔父さま、コレ飲んでからでも遅くないんじゃありません? ――はい、どうぞ。全部オレンジジュースにしましたけど」 

「サンキュ。アンタもたまには気が利くじゃん?」

「ありがと、珠莉ちゃん」

「どういたしまして。ちょっと、さやかさん? たまには≠チてどういうことですの?」

「まあまあ、珠莉。落ち着けって」

 さやかに食ってかかった姪を、純也さんはなだめた。

 ――四人で仲良くオレンジジュースを飲みほした後、お目当ての演目が上演されるシアターに入り、座席に座った。

「この作品は、過去に何回も再演されてる人気作でね。なかなかチケットが買えないことでも有名なんだ」

「まさか純也さん、お金にもの言わせてチケット手に入れたんじゃ……?」

「さやかちゃん! 純也さんはそんなことする人じゃないよ。そういうこと、一番嫌う人なんだから。ね、純也さん?」

 お金持ち特権を濫用(らんよう)したんじゃないかと言うさやかを、愛美が小さな声でたしなめた。

「もちろん、そんなことするワケないさ。ちゃんと正規のルートで買ったともさ」

「ええ。叔父さまはウソがつけな
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