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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
バイバイ、ネガティブ。
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でしょ? あんたが信じてあげなくてどうすんのよ? 大丈夫だって! おじさまはちゃんと、愛美の手紙読んでくれてるよ! んでもって、一通ももれなくファイルしてあるよ、きっと!」

「ファイル……って」

 最後の一言に、愛美は()(ぜん)とした。いくら小説家志望の彼女も、そこまでの発想はなかったらしい。

(……そういえば、園長先生もさやかちゃんとおんなじようなことおっしゃってたっけ)

 このデジタル全盛期の時代にあって、あしながおじさん≠ェ愛美にメールではなく、手紙を書くことを求めた理由。それは、愛美の成長ぶりを目に見える形で残しておきたいからだと。

「まあ、それは発想が飛躍しすぎてるかもしんないけど。とにかくあんまり一人で深刻になんないことだね。グチだったらあたし、いっくらでも聞いてあげるからさ。あたしになら好きなだけ甘えていいよ」

「……うん、ありがと」

 愛美はためらいながらも頷く。けれど、心の中では密かにある決意を固めていた。

(さやかちゃんの気持ちはすごく嬉しいけど、わたしは誰にも甘えちゃいけないんだ。だから、もう決めた! こうなったら、とことんまで構ってちゃん≠ノなってやる! おじさまが根負けして返事を下さるまで!)

 構ってちゃん≠ナ結構。――愛美はもう開き直っていた。向こうがそう思っているならなおさら、それで押し通すつもりでいた。

(おじさまも血の通った人間なら、さすがに最後は()をあげるでしょ)

 ――それはともかく、愛美はまた咳込んだ。

「愛美、あんまりムリしちゃダメだよ? ただのカゼじゃないかもしんないし、明日は学校休んで病院でちゃんと診てもらった方がいいよ」

「うん、分かった。ありがとね」

 ――寮に帰った愛美は、今日も郵便受けに何も来ていないのを確認してから、どうすればあしながおじさん≠ェアクションを起こすのか考えた。

(コレなら、おじさまだって無視はできないよね♪)

 彼がロボットでもない限り、何かしらの反応があるはず。
 怒るかもしれないし、愛美に愛想(あいそ)を尽かすかもしれない。――でも、この時の愛美はそんなことを考えもしなかった。体調が悪いせいで、思考回路まで不調をきたしていたのかもしれない。


****

『拝啓、田中太郎様

 もしかして、あなたはわたしのことを迷惑だと思っていませんか? 「女の子なんて面倒くさい」って、相手をするのもばからしいって無視してるんじゃないですか?
 わたしがあなたをニックネームで呼ぶのも、本当はイヤなんですよね?
 そうでなかったら、あなたは何の感情も持たないロボットと同じです。名前さえ教えてくれないような、冷たい人に手紙を書いたって、わたしには張り合いが
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