暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
バイバイ、ネガティブ。
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 そんなの純也さんに申し訳ないよ。忙しい人みたいだもん)

 ちょっと遠慮がちに思う愛美だった。飛んできて「おめでとう」を言われるなら、純也さんよりもあしながおじさん≠フ方がいい。……まだ顔も本名も知らないけれど。

(……そうだ。今回の手紙には、さすがのおじさまも「おめでとう」ってお返事下さるよね)

 普段は自分で返事の一通も書かず、必要な時には秘書の久留島氏にパソコンで返事を書かせる彼も、自分が目をかけた女の子が夢への大きな一歩を歩みだしたとなれば、何かしらのアクションを起こすだろう。

(どうしても手紙書きたくないなら、スマホにメール送ってくれればいいんだし)

 いくら忙しい身でも、メールの一通くらいは送信できるだろう。――それにしても、便利な世の中になったものである。

 ――というわけで、部屋に戻って着替えた愛美は夕食前のひと時、座卓の上にレターパッドを広げてペンを執った。


****

『拝啓、大好きなおじさま。

 お元気ですか? わたしは今日も元気です。
 それはさておき、聞いて下さい! 秋に応募した文芸部の短編小説コンテストで、わたしの小説が入選したんです! しかも大賞!
 今日の放課後、部室の前に貼り出されてる自分の名前を見ても、信じられませんでした。だって、入選した人の中で一年生はわたしだけ。しかも、他の人はみんな文芸部の部員さんだったんですよ。
 そして、部長さんにベタ褒めされて、文芸部への入部を勧められました。部長さんはもうすぐ卒業されるので、早めに返事がほしいみたいでしたけど、わたしはひとまず保留にしました。もしかしたら、二年生に上がってから入るかもしれませんけど。
 どうですか、おじさま? わたしは小説家になるっていう夢へ向けて、大きな一歩を歩み始めました。それはおじさまの夢でもあるはずですよね? 喜んで下さいますか? 
 もしよかったら、「入選おめでとう」っていうお返事を書いて下さる気にはなりませんか? もし「手紙を書くのが面倒くさい」っていうなら、わたしのスマホにメールを下さい。この手紙の最後にアドレスも書いておきますね。
 以上、初入選の報告でした☆ ではまた。    かしこ

                 一月十五日    愛美    』

****


「いくら忙しくたって、メール送るヒマもないなんてことないもんね♪」

 愛美はメールアドレスまで書き終えると、フフッと笑った。
 それでも何の反応も示さなければ、わざと無視していることになる。自分の娘も同然の存在に対して、そこまで(はく)(じょう)(ふる)()いはできないと思う。

 ――その手紙を出してから一週間が経ち、二週間が経ち……。愛美がいくら待てど暮らせど
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