暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
二学期〜素敵なプレゼント☆ @
[1/13]
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
――夏休みが終わる一週間前、愛美は〈双葉寮〉に帰ってきた。
「お〜い、愛美! お帰り!」
大荷物を引きずって二階の部屋に入ろうとすると、一足先に帰ってきていたさやかが出迎えてくれて、荷物を部屋に入れるのを手伝ってくれた。
「あ、ありがと、さやかちゃん。ただいま」
「どういたしまして。――で、どうだった? 農園での夏休みは。楽しかった?」
さやかはそのまま愛美の部屋に残り、愛美の
土産
(
みやげ
)
話を聞きたがる。
愛美はベッドに腰かけ、座卓の前に座っているさやかに語りかけた。
「うん、楽しかったよ。農作業とか色々体験させてもらったし、お料理も教えてもらったし。すごく充実した一ヶ月間だった」
「へえ、よかったね」
「うん! いいところだったよー。自然がいっぱいで、空気も澄んでて、夜は星がすごくキレイに見えたの。降ってくるみたいに。あと、お世話になった人たちもみんないい人ばっかりで」
「星がキレイって……。アンタが育った山梨もそうなんじゃないの?」
田舎
(
いなか
)
≠ニいう
括
(
くく
)
りでいうなら、長野も山梨もそれほど違わないと思うのだけれど。――ちなみに、ここでいう田舎≠ニは「都会≠ノ対しての田舎=vという意味である。
「そうかもだけど。ここに入るまでは、星なんてゆっくり見てる余裕なかったもん」
施設にいた頃の愛美は、同室のおチビちゃんたちのお世話に職員さんのお手伝い、学校での勉強に進路問題にと忙しく、心のゆとりなんてなかったのだ。
「あ、そうだ。あのね、わたしがお世話になった農園って、純也さんとご縁があったの。昔は辺唐院家の持ちもので、子供の頃に喘息持ちだった純也さんがそこで療養してたんだって」
彼の喘息が完治したのは、あの土地の空気が澄んでいたからだろう。
「でね、純也さんと電話でちょっとお話できたんだ♪」
「へえ、よかったじゃん。……で? 愛美はますます彼のこと好きになっちゃったんだ?」
「……………………うん」
さやかにからかわれた愛美は、長〜い沈黙のあとに頷いて顔を真っ赤に染めた。思いっきり図星だったからである。
(ヤバい! また顔に出ちゃってるよ、わたし! もうホントにスルースキルが欲しいよ……)
純也さんとは電話で話しただけだったけれど、あの時でさえ胸の高鳴りを
抑
(
おさ
)
えられなかった。もしも本人と対面して話していたら……と思うと、何だか怖くなる。
ちなみに、あの家の屋根裏で見つけた本は、そのままもらってきた。「愛美ちゃんが気に入ったなら、持ってっていいわよ」と多恵さんが言ってくれたからである。
「――あ、ねえねえ。このノートなに?」
荷解きを手伝い始めたさやかが、愛美のスポーツバ
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ