暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
ナツ恋。 @
[8/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
が張る。本を買い(あさ)った分の金額も合わせると、三万円以上があっという間に消えてしまったのだ。

「アンタ、買いすぎだよ。服とか買うなら、もっと安く買えるお店あるんだし。ファストブランドとかさ」

「へえ……、そうなの? じゃあ、次からそうしてみる」

 ――話し込んでいると、荷作りがちっとも進まない。

「ねえねえ愛美。荷物、一ヶ月分でしょ? スーツケース一個で入るの?」

「う〜ん、どうだろ? 一応、スポーツバッグもあるけど」

 入学して三ヶ月でここまで増えてしまった洋服類と本を前に、愛美は(うな)った。
 もちろん、全部持っていくわけではないけれど。一ヶ月分となると、荷物も相当な量になるはずだ。本はお気に入りの分だけ持っていくとして、服はどれだけ詰めたらいいのか愛美には目安が分からない。

「じゃあさ、スーツケースとスポーツバッグに入らない分は箱に入れよう。あたしと珠莉とでいらない段ボール箱もらってくるから。――珠莉、晴美さんのとこ行くよ」

「ええ!? どうして私まで――」

「あたし一人じゃムリに決まってんでしょ!? アンタもちょっとは手伝いなよ!」

 手伝わされることが不満そうな珠莉を、さやかがピシャリと一喝(いっかつ)した。

「…………分かりましたわよ。手伝えばいいんでしょう、手伝えばっ」

 プライドの高いお嬢さまも、さやかにかかれば形無しである。渋々だけれど、彼女についていった。

 ――数分後。さやかが二つ、珠莉が一つ段ボール箱を抱えて愛美の部屋に戻ってきた。

「愛美、お待たせ! これだけあったら足りるでしょ」

「まったく、感謝してほしいものですわ。この私に、こんな手伝いをさせたんですから」

(珠莉ちゃんってば! 手伝い≠チたって、段ボール箱一コ運んできただけじゃん)

 珠莉の態度は恩着せがましく、愛美もさすがにカチンとはきたけれど。ここは素直に感謝すべきだろうと大人の対応をして見せた。

「ありがと、二人とも。じゃあ、荷作り始めるね。あとはわたし一人でできるから」

 二人も荷作りやら準備やらがあるだろうし、これ以上手伝わせるのは申し訳ない。……特に、珠莉にこれ以上文句を言われるのはたまらない。

「そっか、分かった。んじゃ、あたしたちはこれで」

 さやかと珠莉が部屋を出ていくと、愛美は早速荷作りにかかるのかと思いきや。

(おじさまに、手紙書こうかな)

 ふとそう考えた。とりあえず、期末テストが無事に終わったことと、夏休みの準備を始めたことを報告しようと思ったのだ。

 いつもは勉強机の上で書くのだけれど、今日はピンク色の座卓の上にレターパッドを広げ、ペンを取った。


****

『拝啓、あしな
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ