暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
恋の予感……
[10/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 珠莉に痛いところを突かれ、言い訳する言葉も思いつかない愛美はしどろもどろに答える。

「あー……、えっと。なんか急に帰らないといけなくなったっておっしゃって、ついさっき帰っちゃった……よ」

「はあっ!? 『帰られた』ってどういうことですの!? 私、言いましたわよね。補習が終わる頃に知らせてほしい、って」

(ああ……、ヤバい! めちゃくちゃ怒ってる!)

 怒られる、と覚悟はしていた愛美だったけれど、予想以上の珠莉の剣幕(けんまく)にはさすがにたじろいだ。

「純也叔父さまはあの通りのイケメンですし、気前もいいしで女性からの人気スゴいんですのよ! あなた、叔父さまを横取りしましたわね!?」

「別にそんなワケじゃ……。珠莉ちゃんには連絡しようとしたの。でも、純也さんに止められて」

「純也()()!?」

「まあまあ、珠莉。もしかしてアンタ、叔父さまにお小遣いねだろうと思ってたんじゃないの? だからそんなに怒ってるんだ?」

 さやかは、珠莉が怒っている原因を「彼女自身が(やま)しいからだ」と見破った。

「そ……っ、そんなんじゃありませんわ! さやかさん、何をおっしゃってるんだか、まったく」

(こりゃ図星だな)

 さやかの読みは多分当たっているだろうと愛美も思った。

「言っとくけど、純也さんとは学校の敷地内歩きながらおしゃべりして、カフェでお茶しただけだから。――おごってもらっちゃったけど」

「なんですって!?」

「はい、どうどう。――それより愛美、アンタ顔赤いよ? どしたの?」

 さやかはまだ怒り狂っている珠莉をなだめつつ、愛美の変化にも気がついた。

「えっ? ……ううん、別に何もないよ?」

 慌ててごまかしてみても、愛美の心のザワつきはまだおさまらなかった。

(ホントにもう! わたし、どうなっちゃったの――?)


   * * * *


 ――それから数日間、愛美は純也のことばかり考えていた。
 夜眠ろうとすれば夢の中にまで登場し、土日は寝不足で欠伸(あくび)ばかり。三日経った今日は一限目から上の空で授業なんて耳に入らない。

「愛美、なんかここ数日様子がヘンだよ。ホントにどうしちゃったの?」

 普段は大らかなさやかも、さすがに心配らしい。けれど、愛美自身にはその原因が何なのか分かっていないため、答えようがない。

 六限目までの授業を全て終え、寮に戻ってきた愛美・さやか・珠莉の三人はまず寮監室に立ち寄った。普通郵便は個人の郵便受けに届くけれど、書留や小包みなどは寮監の晴美さんが預かり、本人に手渡されることになっている。
 そして今日は、愛美が待ちに待ったあしながおじさん≠ゥらの現金書留が届く日
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ