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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
旅立ち、新生活スタート。
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……。まだ今日出会ったばかりなのに、さやかは愛美のことをそう言ってくれた。

「うん……、そうだよね」

 高校生活スタートの日に、早くも友達が一人できた。愛美は早速、この喜びを田中太郎℃≠ノ手紙で知らせようと思った。

 ――夕食と大浴場での入浴を済ませると、愛美は机の前に座った。
 ちなみにこの寮にはそれぞれの部屋にも浴室があり、どちらで入浴しても自由なのだけれど、それはともかく。

 新品の横書き便箋の表紙をめくり、ペンを取ってしばし悩む。

(手紙ってどう書いたらいいんだろう?)

 考えてみたら、愛美はこれまでに手紙らしい手紙を書く機会がほとんどなかった。そのため、ちゃんとした書き方を知らないのだ。

 悩んだ末、思ったことをそのまま書こうと結論づけ、便箋にペンを走らせた。


****

『拝啓、心優しい理事さま

 横浜の茗倫女子大付属高校に到着しました。ここに来るまでは初めての経験が多くて、ワクワクしました。
 この学校は大きくて、まだどこにどんな建物があるのか()(あく)しきれていません。ちゃんと分かったら、お知らせしたいと思います。
 そして、学校生活についても。今はまだ土曜日の夜です。入学式は月曜日ですが、「これからよろしくお願いします」とまずは一言ご挨拶したくてこの手紙を書き始めました。
 このお話を聞いてから半年間、わたしはあなたのことをずっと考えてきました。「一体どんな人なんだろう?」って。
 でも、あなたに関する情報がほとんどないので困っています。偽名だって、田中太郎≠ネんて「いかにも偽名です!」みたいなお名前でしょう?
 他に知っていることといえば……。

 ・長身だということ
 ・お金持ちだということ
 ・どうやら女の子が苦手らしいということ

 の三つだけなんです。
 というわけで、他の呼び方をわたしなりに考えてみました。
 まずは「女性恐怖症さん」。でも、これじゃわたしの自虐になってしまいますね。本当にそうなのかもわかりませんし。
 次に「リッチマンさん」。でも、これじゃあなたがお金持ちだということを皮肉っているみたいですよね。この不景気で、どれだけ頭の切れる人だって投資や株で失敗しますから。
 でも、長身だということだけはずっと変わらないと思うので、わたしはあなたのことを「あしながおじさん」とお呼びすることにしました。勝手に決めてしまってすみません。お気を悪くしないで下さい。親しみをこめたニックネームですから。
 最後に、スマホを送って下さってありがとうございます。早速できたばかりのお友達に使い方を教わりました。
 もうすぐ消灯時間です。寮という一つの建物で大勢で生活していくんですから、ルールはきちんと守らないと。
 では、失
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