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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
旅立ち、新生活スタート。
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「スゴい……」
(やっぱり住む世界が違うなあ。わたし、ここでやっていけるのかな?)
中にはさやかみたいな子もいるかもしれないけれど、この学校の生徒は多分、ほとんどが名門とかいい家柄に生まれ育ったお嬢さまだ。
その中に一人、価値観の違う自分が放りこまれたことを、愛美は不安に感じた。
「――ねえ、愛美さんはどちらのご出身ですの? ご両親は何をなさってる方?」
「…………え?」
(ああ……、一番訊かれたくないことなのに)
珠莉がごく当たり前のように質問してきて、愛美の表情は曇った。
その様子に気づいたさやかが、助け船を出してくれる。
「ちょっと珠莉! ちょっとは空気読みなよ! 人には答えにくいことだってあるんだから!」
(さやかちゃん……、わたしに気を遣ってくれてる)
愛美はそれを嬉しく思う反面、彼女に対して申し訳ない気持ちになった。
「……さやかちゃん、いいの。――わたしは山梨の出身。両親は小さいころに亡くなってて、中学卒業まで施設にいたの」
「施設? あー……、そりゃあ大変だったねえ。じゃあ、学費とかは誰が出してくれてんの? 施設?」
愛美を気遣うように、さやかが言う。けれど、それは同情的な言い方ではなかった。
施設で育ったことを
卑下
(
ひげ
)
していない愛美は、「かわいそうだ」と同情されるのが嫌いだ。県内の公立高校に進みたくなかったのも、中学時代の同級生から同情を広められるのがイヤだったから。
〈わかば園〉には、両親が健在でも様々な事情で両親と一緒に暮らせない子も何人かいた。涼介もそのうちの一人だ。
彼は実の両親からネグレクト、つまり育児放棄を受けていて、児童相談所に保護されたのちに〈わかば園〉で暮らすことになったのだ。
「ううん、施設にはそんな余裕ないって。でもね、施設の理事さんの一人が援助を申し出てくれたんだって。その人がいなかったら、わたし高校に入れないところだったの」
「そうなんだ……。よかったね」
「うん。名前は教えてもらってないんだけどね。その代わり、わたしはその人の秘書っていう人に毎月手紙を出すことになったの」
「へえ……、そうなんだ。――あ、着いた。じゃあまた、晩ごはんの時にねー」
「はーい」
部屋に着くまで、珠莉はほとんど愛美に話しかけてこなかった。
愛美にそれほど興味がないのか、それとも一人部屋を愛美に取られたことをまだ根に持っているのか……。
(まあ、いいんだけど。わたしは気にしないし)
珠莉に興味を持たれなくたって、さやかとは仲良くなれそうだからいいか。愛美はそう自分に言い聞かせた。
一歩部屋に足を踏み入れると、愛美は室内をしげしげと見回す。
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