暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
旅立ち、新生活スタート。
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ど。なんか文句ある?」

 仁王立ちで言い返すさやかに、珠莉は毒気を抜かれたらしい。というか、人前で悪目立ちしてしまったことが格好(カッコ)悪かったらしい。
 
「……いいえ。別に、気に入らないわけじゃないけど。もういいですわ。私は二人部屋で」

 プライドが高そうな珠莉は、こんな下らない理由で目立ってしまったことを恥じているらしく、あっさりと折れた。

「――で、あなたが一人部屋を使うことになった相川愛美さん? お部屋はあなたにお譲りするわ」

「え……? う、うん。ありがとう」

 これって喜ぶべきところなんだろうか? 愛美は素直に喜べない。というか、上から目線で言われたことが(シャク)(さわ)って仕方がない。

「――ま、これで部屋問題は解決したワケだし。早く自分の荷物、部屋まで運ぼうよ」

 さやかが愛美と珠莉の肩を叩いて促す。
 ……のはいいとして、愛美は荷物が少ないからいいのだけれど。二人の荷物はかなり多い。どうやって運ぶつもりなんだろう? 愛美は首を傾げた。

「牧村さん、辺唐院さん。カートがありますから、使って下さい。後で回収に回りますから」

「「ありがとうございます」」

 二人がカートに荷物を乗せてから、愛美も合流して三人で二階の部屋まで移動した。
 幸い、この建物にはエレベーターがついているので、荷物を運ぶのはそれほど大変ではなかった。


   * * * *


「じゃ、改めて自己紹介するね。あたしは牧村さやか。出身は埼玉(さいたま)県で、お父さんは作業服の会社の社長だよ」

「えっ? さやかちゃんのお父さん、社長さんなの? スゴーい☆」

 愛美はさやかの父親の職業を知ってビックリした。こんなに姉御(アネゴ)肌でオトコマエな性格の彼女も、実は社長令嬢だったなんて……!

「じゃあ、さやかちゃんもお嬢さまなの?」 

「いやいや。そんないいモンじゃないよ、あたしは。お父さんの会社だってそんなに大きくないし。お嬢さま≠チていうんなら、珠莉の方なんじゃないの? ね、珠莉?」

「えっ、そうなの?」

 確かに、珠莉は初めて見た時から、住む世界の違う人のように感じていたけれど。

「うん。だってこの子、超有名な〈辺唐院グループ〉の会長さんのご令嬢だもん。そうだよね、珠莉?」

「ええ。確かに私の父は〈辺唐院グループ〉の会長だけど」

「へえ……。っていうか、〈辺唐院グループ〉って?」

 山梨の山間部で育ち、しかも施設にいた頃はあまりTV(テレビ)を観る機会もなかった愛美にはピンとこない。

(きゅう)財閥(ざいばつ)系の名門グループだよ。いくつも大きな会社とかホテルとか持ってるの。すごいセレブなんだー」

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