暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
旅立ち、新生活スタート。
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 自分に一人部屋が当たったことで、この子の希望が叶わなくなったんだ。  
 ――もっとも、愛美が望んでそうなったわけではないので、彼女が責任を感じる必要はないのだけれど。

 ――と。

「まぁったく、ヤな感じだよねえあの子」

「……え?」

 (けん)()感丸出しで、一人の女の子が愛美に声をかけてきた。とはいっても、その嫌悪感の矛先(ほこさき)は愛美ではなく、用務員さんともめている長身の女の子の方らしい。

 身長は百五十センチしかない愛美より少し高いくらい。肩まで届かないくらいの黒髪は、少しウェーブがかかっている。

「あの子ね、あたしと同室になったんだけど。それが気に入らないらしいんだよね。ったく、あたしだってゴメンだっつうの。あんな高ビーなお嬢がルームメイトなんて」

「あの……?」

 多少口は悪いけれど、突っ張っている風でもない彼女に愛美は完全に気圧(けお)されている。

「――あ、ゴメン! あたし、牧村(まきむら)さやか。よろしくね。アンタは?」

「あ、わたしは相川愛美。よろしく。『さやかちゃん』って呼んでもいい?」

「うん、いいよ☆ じゃああたしは『愛美』って呼ぶね。あたしたち、部屋となり同士みたいだよ」

「えっ、ホント? ――あ、ホントだ。よろしく」

 部屋割り表を見れば、確かにそうなっている。
 早くも友達になれそうな子ができて、愛美はますますこの高校での生活が楽しみになってきた。

 その一方で、辺唐院珠莉と男性職員との口論はまだグダグダと続いていた。

「あの……。よかったら、わたしと部屋代わる?」

 見かねた愛美が、おずおずと珠莉に部屋の交換を申し出たけれど。

「いいよ、愛美。そんな子のワガママに付き合うことないって。――ちょっとアンタ! あたしと同室なのがそんなに気に入らないの!?」

 どうやらさやかは、言いたいことをズバズバ言うタイプの子らしい。

(さやかちゃん……、そんなにはっきり言わなくても)

 愛美は絶句した。これ以上話をこじれさせてどうするのか、と。
 〈わかば園〉にいた頃はケンカらしいケンカもなかったので、愛美は基本的に平和主義者だ。人のケンカやもめ事に首を突っ込むのは苦手である。

 けれど、この場では愛美も当事者なのだ。珠莉の(いか)りの矛先が愛美に向くこともあるかもしれない。そうなった時の対処法を彼女は知らない。

(わ……、なんかすごい人集まってる!)

 愛美が驚いた。気づけば、「周りには大勢の新入生や在校生と思われる女の子たちが(さわ)ぎを聞きつけて、「なんだなんだ」と集まってきていたのだ。

「……同室? じゃあ、あなたが牧村さやかさん?」

「そうだけ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ