暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第1章 高校1年生
旅立ち、新生活スタート。
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「……あれ? 乗り換えの駅はどこ〜?」

 早くも複雑(ふくざつ)(かい)()な地下街で迷子になってしまった。
 スマホがあれば行き方を検索することもできるけれど、残念ながら愛美はスマホを持っていないし持ったこともない。
 
 目の前にはパン屋さんがあり、美味しそうな(にお)いがしてくる。

「お腹すいたなあ……」

 お昼を過ぎているし、昼食代わりにパンを買って食べるのもいいかもしれない。
 愛美は美味しそうな焼きたてメロンパンを買うついでに、店員さんに山手に行く路線の駅を訊ねた。店員のお姉さんは親切な人で、愛美にキチンと教えてくれた。

 券売機で切符を買い、改札を抜け、ホームでメロンパンをかじりながら電車を待つ。

 施設にいた頃には、こんな経験をしたことがなかった。自分で切符を買うのも、人に道を訊ねるのも初めての経験で、愛美はドキドキしっぱなしだ。

「次は、どんなドキドキが待ってるんだろう?」

 自動販売機で買ったカフェラテを飲みながら、愛美はワクワクする気持ちを言葉にして言った。
 

   * * * *


 ――茗倫女子大付属高校は名門≠ニいうだけのことはあって、敷地だけでも相当な広さを(ほこ)っている。愛美が通っていた地元の小中学校や、それこそ〈わかば園〉とは比べものにならない。

「わあ……! 大きい!」

 その立派な門を一歩くぐるなり、愛美は歓声を上げた。

 敷地内には、大きな建物がいくつも建てられている。高校と大学の校舎に体育館、図書館に付属病院まである。さすがは大学付属だ。
 
 そして、愛美がこれから生活を送る〈(ふた)()寮〉も――。

「こんにちは! ……あの、これからお世話になる相川愛美です。よろしくお願いします」

 寮母さんと思われる女性に、愛美はおそるおそる声をかけてみる。――果たして、これが寮に入る新入生の挨拶(あいさつ)として正しいのかは彼女にも分からないけれど。

「はい、相川愛美さんね。ご入学おめでとうございます。――これ、校章と部屋割り表ね」

「ありがとうございます。――えーっと、わたしの部屋は、と。……ん?」

 渡された部屋割り表でさっそく自分の部屋番号を確かめた愛美は、そこに自分の名前しか載っていないことに驚く。

「わたし……、一人部屋なんですか?」

「ええ。入学が決まった時に、保護者の方からご要望があったそうよ。あなたには一人部屋を与えてやってくれ、って」

(保護者って……、田中さん≠セ!)

 もしくはその秘書の久留島という人だろう。愛美が施設ではずっと六人部屋だったことを知っているから、せめて高校の寮生活では一人部屋を……と希望したに違いない。
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