暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
序章
ゆううつな水曜日……
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た子がいるの。ただ、女の子はその対象からは外れてたのよ。理由は分からないけれど、もしかしたら女の子が苦手なのかしらねぇ」
「はあ……」
愛美が何だかよく分からない
相槌
(
あいづち
)
を打っていると、園長はガラリと口調を変え、真剣そのものの表情で愛美に訊いた。
「愛美ちゃん。あなたは確か、県外の高校への進学を希望してるんだったわね?」
「……はい。難しいっていうのはよく分かってますけど」
愛美もいよいよ本題に入ったのだと察し、姿勢を正して答えた。
「実は今日、あなたの担任の先生からお電話を頂いてね。今日の理事会でも、あなたの進路について急きょ話し合うことになったの」
「はい……」
一体、どんな話し合いがされたんだろう? ――愛美は
固
(
かた
)
唾
(
ず
)
を飲んで、園長先生の話の続きを待った。
「愛美ちゃんも知ってるでしょうけれど、この〈わかば園〉は経営が苦しくて、愛美ちゃんの希望どおり、私立の高校へは進ませてあげられないの」
「それは分かってます」
愛美が堅い表情で頷くと、園長先生は表情を少し和らげ、申し訳なさそうに続けた。
「愛美ちゃん、あなたには本当に感謝してるし、申し訳ないとも思ってるのよ。私たち職員の手が回らない分、小さい子たちのお世話や施設の仕事も手伝ってもらって」
「いえ、そんな! わたしが進んでやってることですから、気にしないで下さい!」
それは、弟妹たちやこの施設が大好きだから。ただみんなの役に立ちたくてやっているだけだ。
「そう? それならいいんだけれど……。でもね、私はあなたの夢を知ってるし、応援してあげたいの。だから、進学はするべきだと思うわ」
「えっ!? でも――」
「話は最後まで聞きなさい、愛美ちゃん」
言っていることが
矛
(
む
)
盾
(
じゅん
)
している、と抗議しかけた愛美を、聡美園長がたしなめる。
「私が理事会のみなさんにそう言ったらね、先ほどのあの方が私に賛同して下さって。『彼女の文才をこのまま埋もれさせるのは
惜
(
お
)
しい』って」
「えっ? いま、文才≠チて……」
「そうなの。あの方ね、中学校の担任の先生からお借りしてきたあなたの作文をここで読み上げられたの。あれには他の理事さんたちもビックリされてたわ」
「作文?」
「ええ。夏休みの宿題で書いていたでしょう? 『わたしの家族』っていう題名の」
「ああ、あれかぁ」
「そう。あの人、その作文の内容にいたく感動されてね、『彼女は進学させるべきだ!』って強く主張なさって。自分が援助するとまでおっしゃって下さったのよ」
「え……。じゃあわたし、進学できるんですか!?」
聞き間違いかと思い、愛美がビックリして大きな声
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