暁 〜小説投稿サイト〜
トップシークレット☆ 〜お嬢さま会長は新米秘書に初恋をささげる〜
第3部 秘密の格差恋愛
彼のために、わたしができること C
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いいのかな、と。

「……前向きに検討します」

 こう言った時、その意味は二つに分かれる。「本当に前向きに考える」という意味と、「本当はイヤだけど、まぁ一応選択肢には入れておく」というおざなりな意味。この時のわたしの場合は前者の意味だった。

「ありがとうございます」

 それを汲み取ってか、彼は嬉しそうにペコリと頭を下げ、クルマを発進させた。

「――ところで絢乃さん、お誕生日に何かほしいものはありますか?」

 彼は唐突に口調を変え、わたしにプレゼントのリクエストをしてきた。「会長」ではなく「絢乃さん」と名前で呼ぶ時、それは貢が彼氏モード≠ノ入った時だ。

「ほしいもの、かぁ。わたし、昔からあんまり物欲ないんだよね……。小さい頃から色んなものに囲まれて生きてきたからかも」

 そう答えながらも、頭をフル回転させた。「ほしいもの」はなかなか思い浮かばなかったけれど、「これは別にほしくないな」と思うものは浮かんでいたので、それをとりあえず言葉にして言ってみた。彼のことを名前で呼びながら。

「あーでも、ブランド品は別にほしくないかな。っていうか、貢にそんな大金使わせたくないし。お財布事情も知ってるからね」

「コスメはどうですか? クリスマスプレゼントに、里歩さんから頂いてましたよね」

「……貴方、女子ばっかりのコスメ売り場に男ひとりで乗り込む勇気ある?」

「…………いえ、あまり。学生時代にそれで失敗したイヤな思い出があるもので」

 ジト目で訊ねたわたしに、彼は肩をすくめながらそんな暴露をした。初めて聞く彼の過去話の続きが気になって、わたしは目だけで続きを促した。
 何でも大学時代に交際していた彼女から誕生日プレゼントに『口紅がほしい』と言われたらしく、彼が真っ赤な口紅を贈ったらドン引きされてしまったそうだ。『こんなどキツい色を選ぶなんてどんなセンスしてるんだ』と。
 そのオチを聞いた途端、わたしは思わず吹き出した。何でもそつなくこなしていそうな彼の失敗談は、ものすごく親近感があった。

「……うん、なるほどね。やっぱりコスメはやめた方がいいと思う。多分、里歩がまたプレゼントしてくれると思うし、自分でも買えるし」

「…………そうですね。じゃあ、何か別のもので考えます」

 彼は神妙に頷き、この話題は打ち切りとなった。


   * * * *


 ――記者会見にはわたしだけでなく、篠沢商事の実質的トップである村上社長も一緒に臨んで下さったので、すごく心強かった。ちなみに司会進行は久保さんで、それもまた頼もしかった。

 質疑応答の内容は全部を憶えているわけじゃないけれど、島谷さんへの処遇についてはかなり厳しい質問を受けたと記憶している。解雇処分ではなく退職扱いに
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