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トップシークレット☆ 〜お嬢さま会長は新米秘書に初恋をささげる〜
第1部 父との別れとわたしが進むべき道
初めての恋と大きな覚悟 @
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「いえ……」
二人分の感謝を伝えられた彼は、照れくさそうに視線を前方へと戻した。
――自由が丘に建つ篠沢邸の前で、貢はわたしを降ろしてくれた。わざわざ助手席のドアを、執事のように外から開けてくれて。
「今日はお疲れでしょう。ゆっくり休んで下さいね」
「うん、ありがとう。――あ、桐島さん。あの…………」
そのまま運転席に戻ろうとした彼を、わたしは慌てて呼び止めた。このまま別れてしまうのは
名残
(
なごり
)
惜しいし、彼とはまだまだ話したいことがたくさんあった。
でも、ここでの長話は迷惑だろうから……。
「連絡先……、交換してもらえないかな…………なんて」
初対面の夜にこんなお願い、厚かましいかな……と思い、ダメもとのつもりで言ってみたところ。彼はあっさり――というよりむしろ若干食いぎみに「いいですよ」とOKしてくれた。
「……ありがと。あの、これからウチでお茶でも飲んでいく?」
「いえ、遠慮しておきます。もう夜も遅いですし、明日も仕事があるので。僕はこれで失礼します」
「……そう? 分かった。じゃあ……おやすみなさい」
さらに引き留めようとしたら断られたので、内心小さく肩を落とした。
「おやすみなさい、絢乃さん。連絡お待ちしています」
「えっ? ……あー……うん。ハイ」
別れ際に微笑みかけられ、わたしは彼にまともな返しができなくなってしまった。
「――はぁ〜……、なんか顔が熱い……」
彼の車を見送りながら、両手で
火照
(
ほて
)
った頬を押さえていた。
彼が最後に言った「連絡を待っている」というのは、父への説得がどうなったか教えてほしいという意味だったのか、それとも別に意味があったのか。もしも後者だったら……?
彼
も
(
・
)
、わたしに好意をもっているということだろうか。
「……も≠チて何だ」
思わず自分の考えにツッコミを入れてしまい、笑いがこみ上げた。
その時はまだ、彼に対するこの複雑な感情が何だったのか分からなかったけれど、今なら分かる。わたしに自覚がなかっただけで、すでに恋の沼にはまっていたのだと。
「そんなことより、パパの説得頑張らないと!」
ニヤついている場合じゃないと気持ちを切り替え、わたしは二階建ての洋館の前にどっしりと存在する玄関ゲートをくぐったのだった。
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