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トップシークレット☆ 〜お嬢さま会長は新米秘書に初恋をささげる〜
第1部 父との別れとわたしが進むべき道
父の誕生日 B
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かったでしょうけど」
「そうだよね……」
母が何を思って彼にそんな頼みごとをしたのか、その時のわたしには分からなかったけれど。少なくとも父がパーティー中に倒れたのは母にとっても想定外の出来事だったはずだ。
「そういえば桐島さん、お酒飲んでなかったもんね。それもこのため?」
彼が会場で飲んでいたのはアルコール類ではなく、アイスコーヒーだった。
「ええまぁ、そんなところです。僕、アルコールに弱くて。少しくらいなら飲めるんですけど」
「そっか。わざわざ気を遣ってくれてありがとう。じゃあご厚意に甘えさせてもらおうかな」
「はい。……僕のクルマ、
軽自動車
(
ケイ
)
なんですけどよろしいですか?」
「うん、大丈夫。よろしくお願いします」
自動車にまったくこだわりのないわたしは、ペコリと彼に頭を下げた。
――それから数分後、わたしは貢が運転する小型車の助手席に収まっていた。彼は最初、後部座席を勧めてくれたのだけれど、わたしが「助手席に乗せてほしい」とお願いしたのだ。
「……えっ、このクルマって桐島さんの自前なの?」
「ええ、入社した時から乗ってます。でも中古なんで、あちこちガタがきてて。そろそろ新車に買い替えようかと」
そう答える貢はすごく安全運転で、そういうところからも彼の真面目さが窺えた。
「新車買うの? どんな車種がいいとかはもう決まってるの?」
「ええ、まぁ。父がセダンに乗ってるので、僕もそういうのがいいかなぁと思ってます。
現金
(
キャッシュ
)
でというわけにはいかないので、頭金だけ貯金から出してあとはローンになるでしょうけど」
「そっか……。大変だね」
新車を購入するという彼の心意気は
褒
(
ほ
)
めてあげたかったけれど、サラリーマンの身でローンの返済に追われる彼のお財布事情が心配だった。
「ところで絢乃さん、助手席で本当によかったんですか?」
「うん。わたし、小さい頃から助手席に乗るのに憧れてたんだー?」
満面の笑みで答えたわたし。物心ついた頃から後部座席ばかりに乗せられていたので、長年の夢が叶った瞬間だったのだ。
「そうですか……。それは身に余る光栄です」
「え? 何が?」
彼が小さく呟いた言葉に、わたしが首を傾げると。
「絢乃さんの助手席デビューが、僕のクルマだったことが、です」
彼は誇らしげにそう答えた。
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