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トップシークレット☆ 〜お嬢さま会長は新米秘書に初恋をささげる〜
第1部 父との別れとわたしが進むべき道
父の誕生日 A
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に「そうですか」と笑いかけてくれた。
父が倒れたばかりだというのに、わたしまで倒れていられなかった。わたしには母から託された
任務
(
ミッション
)
があったし、初対面の彼にも心配をかけるわけにはいかなかったから。
「――じゃあ、絢乃さんはここで座ってお待ちください。何か甘いものと飲み物をもらってきます」
「えっ、いいの? 何か申し訳ないなぁ」
出会ったばかりの、しかも助けてもらったばかりの彼にそこまで気を遣わせてしまい、わたしはちょっと罪悪感をおぼえたけれど。彼はやんわりと首を横に振った。
「いいんです。僕も食べたいので、そのついでですから。――飲み物は何になさいますか?」
「そう? ありがとう。じゃあ……オレンジジュースにしようかな」
「分かりました」
彼は
頷
(
うなず
)
き、ビュッフェコーナーへいそいそと歩いていった。
「あの人、スイーツ男子なんだ……。なんか可愛いかも」
その後ろ姿を眺めながら、わたしは心がほっこりするのを感じた。倒れかけたのを支えてもらった時には、心臓がドキンと脈打つのを感じたはずなのに。
「そういえばわたし、まだ彼の名前聞いてない」
もしかしたら、この夜限りの出会いだったかもしれないのに、名前を知りたくなったのはなぜだろう? ……きっとこの時すでに、わたしは彼との縁を感じていたのだろう。
――父の状態が心配だったわたしは、彼を待っている間に母のスマホにメッセージを送った。
〈もう家に着いた? パパの様子はどう?〉
すぐに既読はついたけれど、なかなか返事は来なかったので余計に心配が
募
(
つの
)
った。
「――お待たせしました! 絢乃さん、どうぞ」
それからしばらくして、トレーを抱えた貢がテーブルに戻ってきた。二人分のデザート皿とドリンクを運ぶのに、会場にあったトレーを借りたのだろう。
「ありがとう。――あ、そういえば
貴方
(
あなた
)
の名前は……」
小ぶりなケーキ四種盛りのお皿とオレンジジュースのグラスを受け取ったわたしは、改めて彼に名前を訊ねた。
「ああ、そうでしたね。申し遅れました。僕は篠沢商事総務課の社員で、桐島貢と申します。今日は課長の代理として出席させて頂いてます」
彼はアイスコーヒーで喉を
潤
(
うるお
)
すと、丁寧に自己紹介をしてくれた。
「桐島さんっていうんだ。代理だったんだね。そんなの、イヤなら断ればよかったのに」
「いえ、本当は断るつもりだったんですけど。課長の強引さに押し負けて引き受けざるを得なかったというか……。他に引き受けてくれる人もいませんでしたし」
彼は困ったような表情で、代理出席の裏側を打ち明けた。……確かに彼はお人
好
(
よ
)
しに見えるけれど(そして
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