一巻
一話
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らすぐさま飛んでくる攻撃に身構える。
模擬戦は、最早教導となっていた。
セシリア・オルコット。
数年前、両親を列車事故で亡くしており、残った遺産を狙う悪い大人たちから守るために勉強を重ねる。また、女尊男卑の思考傾向あり。
その境遇と繊細な心は、私にカミーユ・ビダンという少年を思い起こさせるには十分なものだった。
彼もまた、周りの境遇によって子供でいることができる時間を減らされ、遂には壊れてしまった少年だ。
彼女もまた、彼と同じ結末に……と考えて思わず笑ってしまった。
彼女のニュータイプとしての素能はカミーユほどではない。それにグリプス戦役だって起こってない。
久々の戦闘に少し昔に戻ってしまった事を自嘲していると、目の前に少女が走ってくる。
「はぁ、はぁ……あのっ! ……えっと、その」
「どうした、そんなに息を荒げて」
その少女……セシリア・オルコットにやさしく声をかけると、彼女は言う。
「どうして、そこまで強く在れる……いや、その強さの源は?」
その問いに、私は少し考えこむ。
今の私の強さの源といえば、それはモビルスーツによる経験だろう。勿論、そう答えることはできない。
「そうだな、……私は人より、少し経験が多い。今のところはこれで勘弁としてもらおう」
しかし、真摯な目を前に少しだけ暈しながら正直に答えてしまった。
どうにも私は、まっすぐな目の若者には弱いらしい。
「明日、日本へ発つのだろう。その時は、よろしく頼むオルコット君」
私は明日、日本にあるIS学園という場所に行く。
男性IS搭乗者はみな平等にIS学園で学ぶ、ということになったらしい。きっとそこには、あの織斑一夏がいるのだろう。
彼は一体どんな人物なのか。
間違いなく、この時代の渦の源になるであろう人物だ。
はてさて、どんな人物かと考えていると、ふと前から声が聞こえる。
「あの、わたくしのことはセシリア、でかまいませんわ」
顔を真っ赤にしながらそう言うセシリアに、私は微笑みかけながら了承した。
IS用のスーツを乱雑に脱ぎ捨て、シャワー室に入る。
シャワーの蛇口を一気に開けると、冷たい水が頭から降り注ぐ。それが茹った頭を冷やしてくれるようで気持ちよかった。
「シャア・アズナブル……」
思わず声に出したのは、先ほどまで対峙していた男の名前。
壮絶な技量だった。まるで相手にされなかったのは初めてだ。
戦う前に、相手を侮る自分の姿がまるで惨めだ。
そして戦うさなか、戦い終わってからも相手を気遣うその心遣い。
それはまるで、|貴族がその義務を負う
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