一巻
一話
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たなかった。
孤児院生まれのこの体では、世界の歪みを見ているだけしかできなかった。
織斑一夏という、男性初のIS搭乗者が生まれるまでは。
男性でもISを扱うことができるかもしれない。それは劇毒の様に世界を巡り、人々を新たなる男性起動者を探す道へと駆り立てた。
そして、運命とは数奇なもので。
私は、世界で二人目のIS操縦者になったのである。
全世界で次なる男性IS操縦者を探すための試験が行われた。
そしてそこで、私は久しく感じていなかった宇宙を実感することになった。
世界が広がる感覚。そして知覚領域が一気に広がるこの感じ。それは正しく、私がニュータイプとしてこの世界でも覚醒したことになる。
この世界でも、人は革新を迎える。
しかし、その真価を享受できるのは女性と織斑一夏だけ。
その事実が、私の心を蝕み始めていた。
この世界が宇宙世紀と同じ、いやそれ以上の歪みを持ち始める。宇宙に出る前に広がるこの人類の革新は、宇宙世紀以上に人を腐らせる。
この鬼火が気付かれたとき、世界は地球を焼き尽くす戦いを始めるだろう。
私はこの世界で最初に生まれたニュータイプとして、それを止める義務があるだろう。
その時こそ、私が本当の意味で「シャア・アズナブル」として生まれるときなのだろう。
まったく、生まれ変わっても私は人身御供の家系から逃れられないな、と一人自嘲する。
その時が来ないことを、祈りながら。
私は、イギリスの代表候補生としてIS学園──国籍問わず、ISを学ぶ学園──へと向かうこととなった。
その中で、私は一人の少女と出会う。
セシリア・オルコット。両親を亡くした、若すぎるISのパイロットであり代表候補生。
その生い立ちと扱い辛い人間性からは、どうしてもカミーユ・ビダンという少年を重ねてしまう。
「君がセシリア・オルコットか。私はシャア・アズナブル、よろしく頼む」
私が差し伸べた手は、無情にも払われる。
「馴れ合おうなんてことは考えないでくださいまし。私は軟弱な男性は嫌いですので」
彼女はそう言う。
「貴方とはこの後模擬戦を行う予定でしたわね」
「そうだな。お手柔らかに頼むよ、何せ私は《《ISに関しては》》素人だからね」
「せめて、わたくしを失望させないでくださいまし。狩りとは、獲物が逃げ回って成立するのですから」
手厳しいな、と私は苦笑する。
彼女が言う通り、この後には模擬戦が控えている。
私が駆るのはブルー・ティアーズのプロトタイプ。BT兵器を二つ積んだ試作型IS。
かつてモビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないと嘯いたがここまで露骨に性能差を感じられる
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