第二章
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信長は満足して己の座に就いた、後日伴天連の宣教師がその彼を見て神をも恐れぬと憤った、だが。
それでもだ、信長は長秀に笑って言った。
「誤解しておるな、南蛮の者達は」
「お屋形様のお考えをですな」
「うむ、わしがあらゆる神仏の上に立とうとしておるとな」
「耶蘇教の神の上にも」
「わしは人であるぞ」
こう長秀に言うのだった。
「あくまでな」
「神仏ではありませぬ」
「ここはじゃ」
安土城の天主閣はというのだ。
「あらゆる神仏を見て感じる場所じゃ」
「言わば神界を感じるところです」
「そうであってな」
それでというのだ。
「別にじゃ」
「お屋形様は神仏の上に立とうとお考えではありませぬ」
「人が出来るか」
そうしたことをというのだ。
「果たしてな」
「出来る筈がありませぬ」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「人がな」
「全くですな」
「他にわしは神仏を信じぬというが」
そうだという者がいるがというのだ。
「このこともじゃ」
「違いまする」
「左様、わしもじゃ」
「神仏を信じておられますな」
「社に参りな」
「寄進もしておられまする」
「爺も寺で供養しておる」
平手政秀、幼い頃彼を育ててくれた老臣である。彼の傾奇きを諫める為に自害したことはよく知られていることだ。
「しかとな」
「神仏を信じておられ」
「敬っておる、この城の石垣の墓石や地蔵もな」
「その力を使わせてもらうこと」
「そうであるからな」
だからだというのだ。
「放っておられるだけだったそうしたものをじゃ」
「集めもうした」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「そうであってな」
「粗末に扱ってはいませぬ」
「決してな」
「左様ですな」
「それでこの場所はな」
「神仏を感じる場所ですな」
「常にな、その見事さをな」
神仏の偉大な力をというのだ。
「そうする場所じゃ」
「お屋形様が」
「そうじゃ、そもそも織田家は平家であるが」
その流れを汲む家だというのだ。
「越前の神職であった」
「それがはじまりです」
「その家のわしが神仏を信じぬか」
「その筈がありませぬな」
「そうじゃ、だからな」
それ故にというのだ。
「これからもな」
「この天主閣で神仏を感じ信じていかれますな」
「そうする」
こう言ってだった、信長は安土城の天主閣の中で暮らしていった。それは彼が本能寺の変で倒れるまで続いた。
織田信長の神仏に対する考えは何かと言われている、だがその真実ははっきりしない。ただ彼が今でいる無神論者ではなく神仏を敬っていたことは確かでありまた神仏を超越しようとも思っていなかった様である、そのことを知ると彼の見方も変わるのではなかろうか。
天主
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