第三章
[8]前話
「発言すればいいです」
「そうなのですね」
「実は最近亡命した方からよく言われます」
「私みたいにですか」
「ソ連に限らず東側の国々からです」
所謂共産圏からというのだ。
「西側、合衆国にもです」
「亡命して」
「具体的何をすればいいのか」
まさに今のマトリョフスキーの様にというのだ。
「わからなく戸惑っている方がです」
「わからない人がですか」
「おられます」
「あの、共産圏は自由がないです」
マトリョフスキ―地震がこのことを話した。
「ですから」
「自由を前にするとですね」
「はい」
まさにというのだ。
「それを求めて来ても」
「自由がどういったものかご存知ないので」
「ですから」
まさにその為にというのだ。
「どうしてもです」
「戸惑ってしまって」
「何をすればいいのか。まるで何もない巨大な空間の中に一人いる様な」
そうしたというのだ。
「感覚に襲われます」
「そうなのですね」
「はい」
まさにというのだ。
「恐ろしいことに」
「そうなのですね」
「何でもあっても」
その場にというのだ。
「それ等に何をどうすればいいのかわからない」
「そうした人が出ていますか」
「最近わかってきました、自由を知らないのでは」
「自由の中に入ってもですね」
「どうすればいいかわからない、我々には当然のことでも」
自由、それがというのだ。
「知らない人にはわからないのですね、そのことがです」
「わかったのですね」
「我々も」
アメリカ側もというのだ。
「そうでした、ですからこれからは自由の中でどうすればいいか」
「そのことをですか」
「紹介させて頂きます」
「それでは」
ここでやっとだった。
マトリョフスキーは微笑んで頷いた、そうして紹介された自由を少しずつだが満喫する様になった。そうしてだった。
彼は自由をいいと思える様になった、だがそれまでに感じた戸惑いもっと言えば恐怖を忘れることがなかった。何をしていいのかわからないと言うそれに対してのそれは。
自由を求めて 完
2024・8・14
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