九十三 黒雲白雨
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本当にうずまきナルトが敵なのか。
ナルと双子なのか。
血のつながっている実の兄なのか。
曖昧な推測ばかりで平行線をたどる一方だったろう。
だからこそ最初に明確な事実を得るべきなのだ。
たとえそれがナルにとってどれほど残酷な真実であろうと。
シカマルの言葉に、ぐっと息を詰まらせるも、キバは更に食い下がる。
キバに触発され、珍しく語気を荒げたシカマルは三白眼に怒りを奔らせた。
「真実を明らかにしないことも優しさだろーよ!」
「嘘をついてアイツが喜ぶとでも!?偽りの優しさなんざお呼びじゃねェんだッ!!」
お互いにナルを想うからこそいがみ合うキバとシカマル。
剣呑な雰囲気を醸し出す両者の言い分をピシャリと切って捨てたのは、意外な人物だった。
「……ほ、本当にナルちゃんを想うなら…!」
おずおずと、しかしながら毅然とした顔で彼女は、シカマルとキバに聞こえるように、精一杯声を張り上げる。
キバと一緒にシカマルがシズネに頼んでいたことを気にしていたヒナタは、おどおどしつつも、双方を交互に見ながらハッキリ言い放った。
「今、この時に傍にいることが…だ、大事だと、思う…よ」
控え目だが、頑とした意志が見受けられ、キバとシカマルは気まずげに顔を見合わせる。
昏く立ち込み始めた暗雲の下。
ナルの許へ向かうヒナタの後ろ姿を、二人は何も反論できずに見送った。
「───わざとだろ」
開口一番、的を衝いた発言。
空を獣のように奔った黒雲が、散り散りになる気配がする。
その背後から迫る本物の暗雲を背に、闇夜を思わせる大群の一部が抜け出た。
途端、蝙蝠の群れは掻き消え、代わりに抜け出た一匹が徐々に姿を変えてゆく。
いや元に戻ったナルトは待ち構えていた再不斬に、ふ、と口許を緩ませた。
「おまえ、わざと血を残したろ」
改めて問われたナルトの頭上。樹影の合間から覗く空から、ぽつん、と最初の一滴が落ちる。
やがて、巨大な車輪を転がすような音が轟いたかと思うと、一斉に大粒の雨が降り始めた。
木ノ葉の里全体を包み込むような雨音の中。
ナルトの濡れそぼった金髪が艶やかに輝く。
黙って答えを促す再不斬の視線に苦笑すると、前髪を掻き上げながら、寸前まで己が引っ掻き回した木ノ葉を一望した。
「明確な証拠が無ければ、いつまでも平行線のままと思ってね」
どれほど多勢に無勢であっても、ナルトがあんな容易く捕まるとはとても思えない。
つまりあれはわざとだということが遠くで窺っていた再不斬には理解できた。
幻術にかければいいものをあえて体術だけで攻撃を
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