九十三 黒雲白雨
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たものの、まんまと逃げおおせられた対象はしかしながら、あるモノを残していった。
一滴の血。
【口寄せの術】を使用する際に流したモノである。
鎖にこびりついたその血を採取して、シズネに鑑定してもらったシカマルは、想定通りの答えに頷いた。
「…ということはやはり、」
「ナルちゃんの双子で実の兄というのは本当のようね」
うずまきナルトの正体。
それを明確に知る為にも血液を採取し、医療忍者であるシズネにまで鑑定してもらったシカマルを、遠くで見ていたキバは眉を顰める。
シズネが立ち去った後、ずんずんとシカマルに足音荒く近づくと、キバは彼の胸倉をつかんだ。
「どういうことだ、シカマル」
「…なにがだ?」
キバの怒りも憤りもなんとなく想像つきながら、それでもシカマルは嘯いてみせた。
「しらばっくれんな。なんでナルを追い詰めるような真似をしやがる」
ただでさえ、過呼吸で倒れたばかりなのだ。
それなのにわざわざうずまきナルトが実の兄だと明確に突き付けるような行為をするシカマルをキバは責めた。
「まだ曖昧にしておいたほうがアイツの為にも良かっただろーが」
「…真実は早めに知っておくべきだ。そうすりゃ傷はまだ浅く済む」
「もう既にぶっ倒れてるんだぞ!」
過呼吸でナルが倒れたことで、立ち去ったナルトの後を追うことは出来なかった。それは仕方がない。
過呼吸が治まり、迷惑かけたと謝ったナルは、引き留める皆に構わず、ふらふらと自分のアパートへ帰って行った。
残った忍び達は一先ず、うずまきナルトの騒動をはたけカカシを始めとした上忍達へ知らせに向かったのである。
その際、シズネに何事か頼み事をしていたシカマルを目敏く見つけたキバは、思わず突っかかったのだ。
キバの言い分を、シカマルは酷く冷めた表情で見返した。
此方とて言いたいことは山ほどある。
「…てめぇこそ、自分の発言に責任持てよと言っただろ」
「…どういう意味だよ」
「昔、お前が何の考えも無しにナルに言ったことだよ」
かつてアマルが大蛇丸のもとへ行ってしまったと嘆くナルから、シカマルとキバは相談を受けたことがある。
その際、キバが気楽に告げた一言を、ナルは今でも重んじている。
その責任を取れるのか、とシカマルは忠告していた。
『正しい道に向かわすのが『友達』だ』というキバの発言。
それを鵜呑みにして必死にサスケやサクラ、アマルを追い続けたナル。
その間、ナルがどれほど傷ついたのか、想像を絶する。
「口先だけのおまえの発言をナルは実行しようと努力し、傷ついてきた…」
「…口先だけだと!?」
「現に、俺達はナルにばかり頼りすぎてる。それは否定できないだろ」
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