九十三 黒雲白雨
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「俺は“暁”のひとりであり、波風ナルの双子の兄であり、」
にこやかに穏やかに悠然と微笑みながら、そのヒトは言う。
「────君たちの敵だ」
「お礼に一楽のラーメン奢るってばよ!一緒に行こうってば!!」
中忍本試験が始まる前、【口寄せの術】が成功する手伝いをしてくれた。
そのお礼に、と誘った相手の面影を憶えている。
「ラーメン、また今度一緒に食べに行こうってばよ!」
自分の誘いに、はにかんだように困ったように、そして哀しそうにそのヒトは言った。
「そうだね。いつか────……」
「…英雄を気取っていただけか?」
冷酷に冷然と冷ややかに、自分と似た瞳の青を細めてそのヒトは言う。
「随分と、腑抜けた英雄もいるものだな」
「この子は俺の大事な─────」
似ているようで違う。同じようで似ていない。
自分と同じ顔でそのヒトは言った。
「大切な───妹なんだ」
目まぐるしく脳裏を駆け巡る光景。揺さぶられる感情。
泣きたくなるような腹が立つような意味がわからない激情に駆られる。
初めて中忍試験で出会った時、助けてくれた。
でもそんな彼が明確に敵だと宣告した。
自分の仲間と戦い、“暁”だと宣言した。
それなのに。
自分の双子だという。血のつながった兄だという。
頭が痛い。胸が苦しい。息ができない。
逃げていった蝙蝠を追おうとする周囲の中、立ち竦んでいた彼女の様子がおかしいことにシカマルは逸早く気づいた。
声をかけようとした途端、身体がぐらりと傾く。
「…ッ、ナル!?」
地面に突っ伏した波風ナルが上手く呼吸ができず、荒い息遣いで胸を押さえている。
急な展開と情報量に追いつけず、不安とショックによるストレスで倒れた彼女は激しい呼吸を繰り返す。
過呼吸を引き起こしたナルを放っておけず、皆は慌てて彼女の許へ駆けつけた。
その様子を痛ましげに見下ろしながらも、次第に遠のく蝙蝠の群れ。
木ノ葉を襲う脅威が去った後には、倒れた英雄を介抱する忍び達の姿があった。
「シカマルくん」
五代目火影である綱手が行方不明の中、忙しい合間を縫って頼み事を聞いてくれたシズネに、シカマルは会釈する。
「なにか、わかったッスか?」
「……ええ」
逡巡する素振りを見せてから、やがてシズネは声を潜めた。
「ナルちゃんと血縁関係であることは間違いないわ」
テンテンが用いた鎖で捕らえ
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