暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#15
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
のの、事後処理がかなり大変だったんだよ。
2週間近く、戦場となった街道が封鎖されていたことに加えて────少しずつ運び込まれた魔物と変異種の死体の数、それに魔獣の異様さに、皇都民は改めて戦慄したらしくてね。
そんな状況で、殲滅を成功させたのがルガレド皇子とその親衛騎士であるSランカー冒険者“双剣のリゼラ”だと知ったら────“双剣のリゼラ”は勿論、ルガレド殿下を“英雄”と称えるのは、当然のことだと思わないかい?
それなのに────ジェスレム皇子の発言を知っている平民たちが、明らかにジェスレム皇子の罪を隠したいだけのそんな噂を────信じるわけがない」

 シュロム=アン・ロウェルダが、ビゲラブナを───いや、先代ベイラリオ侯爵に唆されて驕った者たちを嘲るように、口元の微笑を歪めた。

「ジェスレム皇子が魔獣を放ったという証拠は出なかったから、罪に問われることはないけれど────ジェスレム皇子の立太子を夢見る連中が、さすがにこんな噂が蔓延するのはまずいと焦ったみたいでね。
ルガレド殿下に罪をなすりつけることができないのなら────この騒動の責任を誰かに負わせて、平民たちの目を逸らすしかないと考えたようだよ」

 ビゲラブナの唇が戦慄く。

「まさか────それを、わたしに…?」
「そうらしいね。しかも、おあつらえ向きに、君は皇族を暗殺しようとした大罪人だ。目を逸らすどころか────英雄を殺そうとした者として、ジェスレム皇子に向けられるはずだった悪感情まで引き受けることを期待されているんじゃないかな」
「そんな────そんな…」

 自分が、ジェスレム皇子の都合の悪い噂を掻き消すために切り捨てられたのだと知って────気力と共に身体から力が抜けて立っていられず、ビゲラブナは薄汚れた硬い床に座り込んだ。

 追い打ちをかけるように、シュロム=アン・ロウェルダは冷たく告げる。

「だからね…、裁判を何度やり直したところで────君の判決が覆ることは絶対にないよ」

 その言葉で、ビゲラブナの引いていた血の気が噴き上がるように頭まで昇って────唇から、自分を切り捨てた者たちへの怨嗟が迸った。

「ぁ───あいつらぁああ…っ───これまで、あんなに───あんなに良くしてやったのに…っ、このっ、この私を切り捨てるなんてっ───クソっ、クソっ、なんて恩知らずな…っ」


「────ただ単に、自分の番が巡って来たというだけではないか」


 喚きながら床に拳を叩きつけるビゲラブナに、地を這う冷気のように凍てついた声音が水を差した。

 ビゲラブナは、思わず言葉を呑み込み───顔を上げた。声音よりも凍てついた眼差しで、ダズロ=アン・イルノラドがビゲラブナを見下ろしている。

 ダズロ=アン・イルノラドに言われ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ