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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#14
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醜い表情をさらに歪めて考えていると、足音のような金属の擦れるような耳障りな音が聞こえた。

 それは徐々に大きくなって、この執務室の唯一の出入り口である扉の前で止まった。

 そして、大きな音を立てて扉が開かれ────大勢の甲冑を身に纏った騎士が、どっと踏み込む。

(何だ?底辺皇子の邸で死体が見つかったという報告か?)

 それにしては物々しい。報告だけなら、こんな大勢で押しかける必要はない。

 しかも、防衛大臣である目上の自分がいるのに、入室の許可を請うどころか、ノックすらしなかった。そのことに気づいて怒りが湧いたビゲラブナは、顔を赤く染め────罵倒するために口を開いた。

「一体、何の」
「ビゲラブナ伯爵───ルガレド皇子殿下の暗殺を企てた容疑で拘束させていただく」

 ビゲラブナの言葉を遮って、進み出た隊長らしき一人の騎士が宣告する。

 ビゲラブナは、一瞬、何を言われたのか理解できなかった。気づいたときには、両腕を二人の騎士に掴まれていた。

「なっ、何をする!?」

 掴まれている両腕を振りほどこうと身を捩るが、騎士に敵うべくもない。両脇を固める騎士によって、ビゲラブナは引き摺られるようにして執務室から連れ出される。

「クソ───この…っ、放せ!!」

 何とか拘束を解こうと藻掻(もが)くビゲラブナは、騎士たちによって周囲を囲まれていることもあって────自分たちが、執務室のある宮殿を出たことも気づいていなかった。

 ビゲラブナが暴れるせいで歩みは遅々としていたが、騎士たちは根気よく進み続ける。

 しばらくして、先導する騎士の向こうに聳える塔が視界に入り、ビゲラブナは出かかっていた罵詈雑言を呑み込んだ。

 天を衝く無骨な石造りのその塔は────皇城の奥まった場所にひっそりと建つ、罪人を監禁しておくための“獄舎”だ。

(まさか────この私をあれに入れるつもりか?)

 これまでにも何かしら容疑をかけられたことはあったけれど、自邸で蟄居させられただけで、獄舎に収容されたことはなかった。

 今回は、ルガレド皇子の暗殺を企てたという容疑だ。

 相手がいくら後ろ盾がなく蔑ろにされている皇子といえども、皇族に害をなすなど────皇族の権勢が弱まっていようと、この国が君主制である以上、最も許されざる行為である。

 獄舎に入れられるのは当然の成り行きだったが、ビゲラブナはそうは思わない。

「貴様らっ、防衛大臣であるこの私にこんな仕打ちをして────覚悟はできているんだろうなっ!?」

 怒りに任せて叫んだビゲラブナの贅肉で弛む頬が、口を烈しく動かしたために振るえる。

 騎士たちは答えるどころか、ビゲラブナの激高など気にする素振りすら見せず、た
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