第6話
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「それと明日から夏休みです。
皆さん、はめを外しすぎて事故など起こさないでください。
特に上条ちゃん!!!」
小萌先生はビシッと上条に指を指す。
まわりの生徒は無理無理、上条が問題を起こさない訳がない、とまわりにも上条の不幸がどれほどの物か知られているようだ。
上条も何とかして夏休みを生き抜きますと言って今から疲れた顔をしている。
クラスが笑いに包まれているのに麻生だけが笑うことはなく窓の外をじっと見つめていた。
放課後、麻生が一人で学校の廊下を歩いている時だった。
「おっ!麻生じゃん。」
自分の名前を呼ばれその方に振り向く。
「うん?・・愛穂か。」
尻まで届く長さのロングヘアを後ろに縛り冴えない緑のジャージ姿をした女性教師が麻生に近づく。
彼女の名前は黄泉川愛穂。
彼女は麻生の命の恩人の一人である。
麻生が真理を見て廃人になった時、麻生の親は学園都市に麻生を送り治療してもらおうと考えた。
その時、麻生の担当になったのが愛穂の友人である芳川桔梗だ。
桔梗は麻生の治療に困っていて外に連れ出した時、偶然愛穂と出会う。
愛穂は麻生の状態を桔梗から聞き二人を問答無用で色々な所に連れまわした。
その時麻生から見た二人はとても楽しそうに見えたのだ。
そして麻生は二人に問いかけた。
「何であんた達はそんなに楽しく生きていられるんだ?
この世界はとても醜く人間は欲深く傲慢な生き物だ。
こんな希望も何もない世界で何でそんなに楽しく生きていられるんだ?」
麻生の質問に愛穂は麻生の目線まで腰を落として優しく話しかける。
「ウチはそんな難しい事よく分からないけどそれでもこの世界にはあんたが思っている以上に楽しめる事があるとウチは思ってる。」
それを聞いて麻生は鳩が豆鉄砲くらったような顔をする。
続いて桔梗が麻生の頭に手をのせる。
「私は愛穂より人間のそういった暗い所は少しは知っている。
人間はそういった生き物だけど全部が全部そういった人間じゃあないわ。」
その言葉は麻生を元に戻すためのその場限りの嘘かもしれない。
それでも麻生の心に深く響いた。
桔梗は六時までに病院に帰ってくるのを約束するなら自由に見て回っていいわよ。
麻生は一人でふらふらと歩く。
そこである公園で何人か同い年くらいの子供達がちょうど遊び終わったのか解散する所を見た。
麻生はこちらに向かってくる女の子に声をかけて簡単に一つだけ質問した。
「ねぇ君は生きてて楽しい?」
その問いかけに女の子は最初、首をかしげたがすぐに満面の笑顔に変わる。
「うん!!私は今とっても楽しいよ!!!」
そう言って女の子は自分の家に戻っていた。
麻生はその答えだけで充分だった。
(もう少しこ
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