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冥王来訪
第三部 1979年
戦争の陰翳
隠密作戦 その3
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20年以上たち問題点が洗い出された技術しか信用しなかったのだ。
「現に3人では1か月はかかろうという設計を1日で完成させようとしている。
凄すぎる」

 ソ連のコンピューター開発は、開発者を管理するKGBの極秘体制が祟って、致命的な遅れが生じていた。
技術的処理をソ連の文献からよりも、西側の科学雑誌から盗作するほうが簡単だという傾向が支配的になっていた。
 この傾向は、ソ連のみならず、衛星国の東独、ルーマニアでも一般的で、大々的なスパイ作戦が実施された。
中ソ対立にあった中共も同様で、早い段階からIBMや関連する企業の中に大規模なスパイ団を抱えていた。
 それは次第に戦術機開発の面にも影響していた。
戦術機は、最新鋭の電算機技術が使われているからである。
 GRU、あるいはソ連にとって、今回の作戦は起死回生の方策の一つであった。
2度目の月面攻略作戦を成功させるには、ESP専用機であるBETA精神探索マシーンが必要であると考えていた。
 敵の思考を知ることが出来れば、彼らを超能力者を使って、催眠術で操作できる。
万策尽きかけようとしていたソ連は、その様なオカルト的な考えに走っていたのだ。
 自慢の核飽和攻撃も、自走砲やロケットによる砲撃も、細かい粒子の舞う月面では効果を発揮しなかったからだ。
補給線も地球から遠い月面では厳しく、特攻隊を送るメリットも少なかったからだ。
故にハイネマンを誘拐して、F‐14のデータを入手し、新型機を作ることとしたのだ。



 マサキたちが福井に向かっている頃、篁亭の周辺で動きがあった。
屋敷を見通せる場所に、黒い目出し帽に黒い服を着た十数名の男たちが集まっていた。

「あの屋敷を見てみな」
 そういって隊長格の男は、双眼鏡を部下に差し出す。
「今回の仕事は、ある女を誘拐して、その女の持っている秘密を盗み出すことだ。
その女は、あの屋敷の主人の妻をしている」
 男の一人が隊長に聞いた。
「その女を誘拐することが、そんなに大変なのか」
 隊長の男は、顔を歪めて答えた。
「その女は、ミラ・ブリッジスといってな、F‐14の開発に携わっていた女だ。
米海軍関連の仕事をしてきた女だが、どういう風の吹き回しか、ゼオライマーの木原に近づいた」
「ゼオライマー?」
 隊長は、大げさに肩をすくめてみせる。
「そうよ、あの憎むべき日本野郎(ヤポーシキ)の超マシンの強化に乗り出した。
それをみすみす逃すことはない。
それにミラ・ブリッジスの技術が木原に渡るとなると、同志議長がお困りだ。
世界平和の邪魔になる……」
 ようやく事態の重大性に気付いた部下たちは、腕を組んで考え始めた。
「それをこっちに取り上げようというのだが……おや?」

 篁亭の前に止まった車に、二人の人
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