九十二 VS木ノ葉
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狂な声が驚嘆を交えてその場に響く。
数多の刃の斜線を読み取るなどあり得ない。
それも自由に身動き出来ない空中で。
「【心転身の術】を使わなかったのは正解だったね」
カカカッ、とクナイが地面に突き刺さる。それ以外の武器は周囲の木々の幹に深く刺さった。
いのの怪力で割れた地面の裂け目や、罅割れずに済んだ地にも突き刺さる刃の雨。
針鼠の如く、地面にクナイが刺さるその様はまるで、数多の人間の墓標のようだ。
墓標の中心にいたはずのナルトの声が、耳元で聞こえて、いのは弾かれるように振り返った。
「地獄を見ずに済んだ」
すれ違い様に囁かれた言葉の意味を問う暇もない。
むしろ、心を覗く隙さえ与えない相手にどうしろというのか。
途方に暮れるいのを奮い立たせるように、シノが腕を前へ掲げる。
大きな袖口から溢れるようにして、ざわざわと小刻みに波打つ黒い蟲の群れが湧いてくる。
皮膚を破って後から後から湧いて出て来る【奇壊蟲】。
シノの一族が、この世に生を受けた瞬間から己の身に寄生させ、チャクラを与える代わりに戦闘に用いる、まさに一心同体で生きることを宿命づけられている蟲のことだ。
集団で獲物を襲い、チャクラを喰らう蟲の大群が波となってナルトへ襲い掛かる。
しつこくナルトを追い回す蟲の群れを操っていたシノの表情が、サングラスで目元を隠しているにもかかわらず、徐々に険しくなってゆく。
蟲の数が減っている。
代わりに、どこから迷い込んだのか、黒と白の蝶が蟲の群れの中に紛れ込んでいた。
当初少なかった蝶はやがて、シノの操る奇壊蟲よりも数を増やしてゆく。
ひらひらと優雅に舞っているだけのようだが、次から次へと奇壊蟲がボトボト、と地面へ落下してゆく。
妙な現象に常にポーカーフェイスであるシノも流石に眉を顰めたが、彼は一族の誇りを胸に勝利を確信する。
「俺の前で蝶を操るとは…良い度胸だ。なぜなら、」
油女一族は虫全般に強い。それは奇壊蟲を操るからではない。
虫の類ならば己の支配下に置いてしまうからだ。
「我々油女一族の前では無意味だからだ」
蟲を操る一族故に他の虫も支配下に置いてコントロールする。
つまりは、敵の得物である虫を己の駒へ変えて逆に襲わせることも可能である。
故に、虫である蝶々をシノが手駒にすることは造作もない。
そう、揺るがぬ自信がシノにはあったし、操れるという自負もあった。
しかし────。
「残念ながら、虫ではないよ」
【黒白翩翩・耀従之術(こくびゃくへんぺん・ようしょうのじゅつ)】
それは生を持たぬ、ましてや動くことなどできぬ黒白の百合の花弁。
黒き蝶と白き蝶に見えるそれは、二枚の花
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