アンサンブルを始めよう 2
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他者を認めず、理解しようともせず、交わらず、一定の場所から動こうともしない存在を、なんて呼ぶのか」
「……引き籠り、ではなく……?」
「ああ。もちろんそれもあるが、厳密には少し違う。お前らは」
「我らは……?」
薄い緑色の目力に気圧されてか、リーシェの喉が浅く上下する。
そして
「『昼行燈』だ」
「うわあああああああ────────ん??」
「(あ。意味、知ってたんだ)」
昼行燈。
明るい時間帯に明るい場所で灯りを点けてどうする。
燃料の無駄遣いは勿体ないから、おやめなさいの意。
転じて、生産性の欠片もない、無意味なコトばかりしたがる人や、誰にも何にも、自分自身にすら貢献しようとしない、ただただそこに居るだけの、全面的に役立たずな人を揶揄した言葉。
ちなみに、行燈とは東大陸の一部の国で使われている照明器具を指す。
素材や形状に違いはあるが、他大陸でのランプなどと同じ役割の品だ。
「我らは! 我らは役立たずなどではぁあーっ!」
「そうか? 私の目には、母さんの結界の中でのんびり畑を耕しつつ警戒と称して散歩してるだけの暇人に見えたけどな。他に何かやってたか?」
「せ、世界樹に、害意ある生者を近付けぬように迷わせたり!」
「うん。ちょっとした悪戯気分の散歩だな」
「さまよえる魂を、世界樹の元へ誘導したり……!」
「世界樹の循環は世界中に及ぶんだろ? ってことは、お前らが居なくても世界樹の根本に集まる仕組みになってるんじゃないのか? それ。せいぜい到着までの時間を、里の幅分だけ短縮してる程度?」
「ぐ……! あぅうう〜〜……っ」
返す言葉が見つからないのか。
悔し気に、唇をパクパクと動かすリーシェ。
「他には? 何をしてた? それはお前やお前が将来産み育てる子供達が、あんな目に遭わされてでも継続しなきゃいけないことか? お前は本当に、納得できているのか?」
「っ!」
追い討ちをかける問いに、小さな体がガタガタと震え出し。
戻りかけていた生気が鳴りを潜めてしまった。
(…………)
リーシェの恐怖は、ロザリアの経験と記憶から来るもの。
ならば今のリーシェは、べゼドラに監禁されたばかりの頃のロザリアだ。
あの激しい拒絶と嫌悪と涙は、ロザリアの物。
泣きながらも気丈に振舞っていた彼女の本心を直に見て。
私の心臓が、握り潰されたかのように鋭い痛みを訴える。
それでも傍に居たいと願うのだから、私という人間は、本当に……
「選んだのは私だ。お前の後悔なんざ知るかよ、バーカ」
私が、自分のコートの胸元を握り締めていたからか。
ロ
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