アンサンブルを始めよう 2
[6/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
恐怖と戸惑いに濡れた目で、ロザリアと私を交互に見上げる。
「わ、我は」
「ここに居たいと思うんだったらそうしろ。その場合は、さっき見せた通り子供を産む道具にされるだけだが、お前が納得した上で受け入れるんなら、こいつらを解放して私達はこの場を去る。後はお前らの好きにすれば良い。けど、ほんの少しでも迷いがあったり嫌だと感じてるんなら、一緒に来い。外の世界と、自由に選び取れる無数の未来を、お前に見せてやる」
良いことも、悪いことも、無意味に思えることも、たくさん経験しろ。
目に入るすべての事象と向き合いながら、お前自身の将来をどうしたいか考えていけば良い。
真顔でそう告げるロザリアに、リーシェは眉をぐっと寄せる。
「し、しかし、聖樹が」
「ここの結界なら、私にも扱える。幸い、二方向が高い山に挟まれてるし。東側と西側の出入口を直接繋げば、あらかたの侵入は防げるぞ。里の空間を遮断すれば完璧だな」
え。
(空間を遮断するのはダメです、ロザリア。世界樹には万物の魂を修繕する役割もあるんです。接点が小さいほど、世界の衰退を加速させますよ)
これは、レゾネクトの中で得た『彼女』の知識だが。
勇者一行も知っていた情報だ。
だからこそ当時のマリアさんは、侵入者を防ぎ切れないと判っていても、目眩まし程度の結界しか張ることができなかった。
「衰退? よく解らんけど、なら、上下を開いとけば良いんじゃないか? 地面に筒を置く感じにしとけば、少なくとも人間の侵入は遮断できるぞ」
「……遮断、できる……? 侵入者を?」
「ああ、そうだ」
抱きついたままの両腕を外させ。
リーシェが吐き出した物は気にも留めず、その場で膝立ちになり。
彼女と目線を合わせて、その両肩をしっかり掴む。
「よぉーく考えてみろ、リーシェ」
神々は現代でも母さんが作った異空間で惰眠を貪っててこっちの世界には我関せずだし、世界樹を実際に害したバカ親父は猛省中。
害しそうな悪魔共も、半分寝てる状態だから手の出しようがないし。
人間の侵入は、新しく組む私の結界で阻んでやる。
動植物は循環の輪を踏み出してないから、脅威にはならんよな?
そもそもこんだけデカく成長してんだし、世界樹は回復済みだろう。
「つまり、だ」
一旦目を閉じたロザリアが、息を大きく吸い込んで。
リーシェの顔をまっすぐに覗き込み
「お前らがここに居続けても、やることがない!」
きっぱりはっきり、断言した。
「…………やることが……ない……」
涙も止めて茫然と呟くリーシェに、ロザリアは真剣な顔でこくりと頷く。
「私はな。ごく一部とはいえ、人間の世界を歩き回って知ったんだ。お前達みたいに、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ