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逆さの砂時計
アンサンブルを始めよう 2
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 私に感知できてないだけで、なんらかの攻防が始まっているようだ。
 ロザリアもリーシェも長様も、立ち位置どころか手足の指一本でさえ全然動かしてないせいで、そうと知らなければ、ただの口喧嘩にしか見えない。
 『時間』の力同士がぶつかり合うと、第三者の目にはこう映るのか。

「第一! この期に及んですらリーシェに対して一言も説明しようとしない自分本位なお前ら如きに、何が護れるっていうんだよ! バカバカしい! 世界樹を云々以前に、その歪み切った世間知らずな使命感と正義感を世界の果てで見直してこい?? 母さんの力に頼ってるだけの引き籠りがっっ??」
「…………っ??」

 長様の足下で薄い緑色の閃光が弾け飛び。
 何百もの細い槍となって、彼の体を刺し貫く。

 思いがけない方向からの攻撃? で、長様がよろけた隙を衝き。
 ロザリアの右手が、新しい球体を作って素早く放つ。
 球体は、長様の体を(ほこら)ごと難なく呑み込み……数秒後。
 ぽむんっ! と、妙に可愛らしい音を立てて、長様と(ほこら)を吐き出し。
 そよ風に流される煙のように霧散した。
 根の上に ごろりと横たわった長様は……

(あの、ロザリア?)
「なんだよ」
(長様、ぴくりともしてないんですけど……気のせいでなければ、呼吸まで止まってませんか?)
「体の時間を止めてるからな。呼吸もしてないし脳も心臓も止まってるぞ。ちなみに、分離させた意識は結界の外へテキトーに放り出しといた」
(分離?)
「だってソイツ、人の話になんざ聞く耳を持ってない、お仕事第一、むしろ仕事にしか興味がない熱血漢だもん。こうでもしなきゃ、いつまで経っても水掛け論じゃん。一度外界の荒波で揉まれて柔軟な思考を身に付けてくれば良いんだ。ま、社会勉強ってヤツだな」
(……幾百年を生きた人外生物が、社会勉強……)
「どんだけ長く息をしたかよりも、どれだけの物を見て聴いて触れて感じて見極められるか、が重要なんだよ。言われたことだけをこなす努力(笑)で満足してるクソガキにこれ以上付き合ってられるか。私の時間が勿体ない。論より体験、そんで実証。ソイツにはそれで十分だ」

 かっこわらいかっことじ、って。
 不機嫌で辛辣(しんらつ)さが増してますね、ロザリア。

「外界を知っても変わらないんなら、それはそれで良い。そうあるべき種族なんだろうさ。でも、自分達以外のあり方を知ろうとせず、個人の気持ちを考えようともしないで無理矢理引き継がせる義務なんぞ、クソっ喰らえだ。守護者も護り手も関係ない。根こそぎ引っこ抜いて、すべて抹消してやる。だからお前も、自分で学んで、自分で考えて、自分で決めろよ、リーシェ」
「…………ロ……ザ、リア、さま」

 頭頂部を撫でられたリーシェが顔を上げ。

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