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逆さの砂時計
インナモラーティは筋書きをなぞるのか 4
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していて、それを悟られてないとすれば……なるほど、筋は通るのか。

 で。
 何故、数歩分後ろで立ち止まっているのでしょうか、師範。

「お前、見守るって、対象に気付かれずに四六時中貼り付くって意味か! フィレスの食事にも、(はばか)りにも、入浴にも、寝床にも、ずっとずっと……。とんでもない偏執狂だな!」

 えぇー……

『……ほんっと、大概にしとけよ、このクソガキ……! そんなくだらない考えを巡らせるのは、歴代でもお前くらいのものだったぞ、バカモノが! フィレスの寝顔が可愛いのは認めるがな??』

 ええぇー…………

「うわっ、マジモンか! 俺だって、まだちゃんとは見てないのに……っ お前こそフィレスから離れろ、変態鳥!」
『断る! 私のフィレスに欲情塗れの汚れた虫など近付けさせるものか! お前は特に許さん!』

 欲情塗れの虫……

「なんでだよ!」
『人間であるお前と、女神であるフィレスが契りを交わしても、悲しむのは取り残されるフィレスだけじゃないか! 人間のままでいると決めたなら、この子に余計な情を掛けるな! 情を交わせば交わしたその分、フィレスの後悔や絶望が深くなるんだと、バカなお前でも想像はつくだろう??』
「「!」」
『師の自覚があるなら、フィレスを悲しませるような選択はするな??』

 頭を低く、両の翼を広げて師範を威嚇するアオイデーさんの思いがけない切り口に、私の指先がピクリと動いた。
 師範も、片方の眉を跳ね上げる。

「……アオイデー。お前が言いたいことは分かるが、後悔も絶望も、するかどうかを決めるのはお前じゃない。フィレス自身だ」
『絶望は、来ると解っていても受け入れられないから「望みを絶たれた」と言うんだ。避けられると分かっていることなら、できる限り避けるべきだ。せめて、フィレスだけは……』
「……貴女が誰の話をしているのかは知りませんが……。仮に絶望を避ける手立てがあるとしたら、それは誰とも関わらず、何も望まず、無為に時間をやり過ごすことだけです。生きながら死んでいるのと何一つ変わらない」

 逆に言えば、私の後悔と絶望の深さは私がどれだけ真剣に生きてきたかを自らに示す証です。何事からも目を逸らし耳を塞ぎ、意欲の欠片もなく得た薄っぺらい証など、私は要りません。
 第一、私が人間世界を離れるのは無用な混乱を生じさせない為であって、逃げる為ではない。

「『後々が楽になるから早めに関わりを断っておけ』、などと言われても、余計なお世話です、としかお答えできませんよ」
『……っだが』

 私の顔を覗き込み、か細い声で ぴるる と鳴くアオイデーさん。
 生物の気配を消して何千年か、もっと長く世界を見守り続けてきたらしいアルスエルナ王国の守護女神は、たかだか二十
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