インナモラーティは筋書きをなぞるのか 3
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で自殺するつもりか??』
小鳥が再び、酷く慌てた様子で暴れ出した。
ジタバタしても手の中からは逃げ出せない、そんな小鳥を見下ろす師範。
その愉しげな笑顔はなんだか、悪魔というより、悪人っぽい。
「失礼だなあ、野良鳥。俺は好奇心だけで動いた例はないぞ?」
『まさに今! 物は試しだやってやろう! って顔になってるだろうが! あと、私は天属こそ抜けているが、生粋の女神だからっ! 外見は鳥でも、野良ではないからな??』
「俺は元々こういう顔だ。楽しんではいるがな。お前、守護女神とか言ってずっと潜んでたクセして、今この瞬間に姿を現したってことは、フィレスを迎えにきたんだろ? 場外から飛び込んできた見物客が、我が物顔で獲物を掻っさらっていくとかさあ。そういうの、許しがたいんだよなあ〜」
えーと……私は獲物なんですか? 師範。
『現段階で表に出る気はなかった! フィレスが人間世界を離れるまでは、今まで通り陰ながら見守っててやろうと思ってたのに! お前があまりにもバカなことを言うからっ!』
「俺にも可能性があると言っただけだ。実際にこれからやってもらおうとは明言してない。やる気もないし」
「『え』」
「なんだよ、その反応。フィレスまで失礼な」
「いえ、その……」
「『私』を誰だと思ってるんだ。北区でそこそこ大きい教会を預かる神父、アルスエルナの第二王子ソレスタ=エルーラン=ド=アルスヴァリエだぞ。フィレス以上にいきなり消えたら大勢の民が困る立場の人間なんだ。そんな簡単に棄てて消えるわけないだろうが」
「それは、そうですが」
師範は責任感が強い人だ。
面倒くさいことは面倒くさいと言って避けたがりはするが。
一度背負ったものなら絶対、中途半端に投げ出したりはしない。
気まぐれに見える騎士団長の辞職と神父への転職にも、裏にはそれなりの理由がある筈だと私は踏んでる。
クローゼットにしまわれてた剣や傷んだ衣服が良い証拠だろう。
だからこそ、先ほどのセリフには驚かされたのだ。
彼が自身の立場と責任を切り捨てるような、ありえないことを言うから。
『本当に? 本当に、試す気はないんだな?』
「くどいっての。俺はフィレスの師だ。次期メルエティーナ伯爵フィレス=マラカイト=メルエティーナを導き、立たせる者。失望なんかさせるかよ」
大人しくなった小鳥を空へ解き放ち、私達に背を向けて歩き出す師範。
私は
『……フィレス、私は……』
「一緒に行きましょう。守護女神だという貴女の話も聴いてみたいです」
私に向かってパタパタと飛んできた小鳥を右肩に迎え入れ。
ふわふわな体毛を一撫でしてから、師範の後を追う。
いや……
「構いませんよね、師範」
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