Side Story
少女怪盗と仮面の神父 56
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司教の第一補佐って、厳密には、出世を確約された修行徒なのね。だから、条件を満たしていればどこの誰が選ばれても問題はなかったんだ。文字の読み書きや外国人との淀みなき会話となると、一般民の生活じゃまず習得できないし、今までは貴族や商家出の信徒から選ばれたんだろうけど)
現時点でのミートリッテは、一般信徒より実務に遠く、一般修行徒よりも経験不足で、教会関係では何の権限も無いし、人的な繋がりも期待は薄い。
与えられた準備期間でも、足場の構築に間に合うかどうか。
加えて、信仰心の有無を問われたら、ごめんなさいとしか言えない現実。
これぞまさしく、役立たずの極致。
(焦っても仕方ないって、分かってはいるんだけど……)
あまりにも無力だ。
そう、ため息を吐きかけ……
「聖職に直接関われなくても、貴女がやれることはたくさんあるわよ」
「ぐふっ」
喉の奥で引っ掛かった。
「あの……国政や宗教に携わる方々って、心を読む力でもあるんですか?」
「まあ! それはそれで楽しそうね。誰も彼もが正直な嘘吐きにならなきゃいけない世界。どれだけの腹芸師が心労で倒れるか……ふふ。見物だわ」
発想がえげつない。
「顔色や目線・目蓋や眉や指の動き・声の出し方・間の置き方・言葉選び・言葉や態度への反応。私達が見ているのは、そういうところよ。新規事業を成功させたいなら、貴女はそのまっすぐな感情を操れるようになりなさい。無邪気なだけの純粋な子供に未来を委ねる人間など、存在しないのだから。とりあえず、書簡を確認させてちょうだい」
カップと受け皿をローテーブルに置いたプリシラが、手を伸ばしてくる。
「……私のほうが使者だと、確信してるんですね」
「アルスエルナ国内で自生するコーヒーノキが見つかるなんて、バーデルにとってもアルスエルナにとっても、私にとっても想定外だった。この情報は一刻も早く正確に中央教会へ運ばなければ、リアメルティ領周辺で血生臭い混乱が起きてしまう」
速さ優先で、中央区に召喚されているアリア信徒が直接手渡すか。
正確さ重視で、大森林の管理権を預かってる近二代のリアメルティ領主のどちらかが届けるか。
「他の人間なら迷う局面でも、エルーラン殿下なら、危険を承知で当事者を素早く動かすわ。一番大切なことは決して見失わない方だもの。……よく、両陛下や王太子殿下の前で口を滑らせなかったわね? なんとかして書簡を取り上げようと、相当な揺さぶりを掛けられたでしょうに」
「ハ……リアメルティ伯爵も命懸けで動いているので、私も気取られまいと必死だったんです。王城の周辺は怖すぎます。壁一面に、目や耳がびっしりくっついてるみたい」
ミート
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