暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 54
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メですか」
「はい。貴女お一人で、お通りください」
「どおおおおおおしても?」
「何度でもお答えします。貴女お一人で、お通りください」
「うぐぅぅ……生きて出られる気がしないぃぃ……」

 ネアウィック村と南方領の中心街全域を合わせても余りありすぎる王都の大きさ・人口の多さ・途切れない商隊の列・夕暮れ後も下がらない熱気や、いつ見ても不自然な白さが際立つ外壁の群れ等々に気圧(けお)された挙句。
 アーレストの教会なんか内部でいくつでも現物保存できそうなバカでかい中央教会の外観に戦慄した末。
 奥まではお一人でお進みください、なんぞと迷子確定な処刑宣告を受けてなお、平然としていられる田舎娘は存在しないだろう……という話だ。

 受付の席に座る長衣姿のお姉さんの清々しい笑顔が、いっそ憎らしい。

「セーウル殿下ぁ〜……」
「中央教会は治外法権だ。諦めろ」
「デスヨネ」

 数多の雨嵐が吹き荒ぶ、悪天悪路の最中を突き進み。
 点在する居住地で休憩を挟みつつ、馬を換え、車輪を換え、馬車を換え。
 三ヵ月近くの時間を掛けて、ようやく辿り着いたアルスエルナの王都。

 これそのものが山なのでは? と疑った巨大すぎる王城の広々した客室で一泊後、第三王子の帰還に併せて次男不在の国王一家とご挨拶。
 更に一泊して本日。
 アルスエルナ教会の現次期大司教へと挨拶する為、ヴェルディッヒ直々の案内で中央教会の関係者専用受付へ。
 執務室まで一緒に通してもらえるかと思いきや。
 見学者や信徒達でごった返す見知らぬ建物で、いきなりの個人行動通達。

 嫌がらせか。

 王城では緊張しててほとんど眠れなかったし、出された食事なんか目でも舌でも味わってる余裕はなかったし、王族方のご尊顔など直視できないし、覚えられないし。
 ちょっとでも隙を見せていたらと思うと、あらかじめ最低限の作法だけは教え込んでくれていたヴェルディッヒには、頭が上がらない。

 あ、でも。
 第二・第三王子の容姿は、どうやら王様譲りっぽかった。

 王妃陛下と王太子殿下は纏う空気からして異次元のソレだった気がする。
 なんかこう、体の周りで見えない花や星が発光しながら飛び交う感じ。
 アーレストとはまた別の(きら)びやかさだった。

 と、正直な感想をヴェルディッヒに告げてみたところ。
 地味な存在で悪かったな! と拗ねられた。
 気にしてたのか。

「そんなに萎縮しなくても、内部の造りは至って単調だぞ。迷うとしたら、右へ行くか、左へ行くか、手前から何番目の扉に用があるか、だけだ」
「だって壁一面窓だらけじゃないですか! 何百部屋あるんですかここ??」
「教会正面に見える窓の数と部屋の数は一致しませんよ。今は建物を三つに割って、
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