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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 54
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いる現状、貴方を呼び捨てにした場合、罰を受けるのは私のほうなのですが? 不敬罪確定で死ねと仰いますか。顔馴染み相手に、ずいぶん残酷な要求をなさいますね。()()()()殿()()

 顔を上げたミートリッテが、わざとらしく首を傾げてみせれば。
 周りに立つ騎士の何人かが一斉に、セーウル王子へと視線を投げた。
 その目がちょっぴり非難めいているのは、長年の村暮らしで一般民感覚が染みついてしまったらしい彼に、王子たる自覚を促す為か。

「だっ、誰もお前に死ねとは言わねぇよっ! てか、んなコト言ったら俺がこいつらに殺されるわ!」
「? 騎士に殿下を殺せるわけがないでしょう」
「いいや、やる。こいつらなら絶対、ためらいなく()る。」
「?」

 寒気でもするのだろうか?
 真っ青な顔で両肩を抱き。
 豪華な衣装で飾り付けた体を、無駄に大袈裟に竦ませるセーウル王子。
 怯えを含んだ新緑色の目が捉えているのは、彼の護衛である騎士達だ。
 王子が護衛に怯えるとか、意味が解らない。

「それに。お前はもうアリア信仰上層の正式な関係者だ。王族(おれ)と同じ馬車に乗ると決まった時点で、よほどのことじゃない限り不敬罪は適用されない。もっと堂々と構えてないと、中央教会の信徒達に舐められるぞ」
「うーん……」

 『堂々』と『図々しい』と『馴れ馴れしい』の違いについて。
 少々考察したいところだが、これ以上の立ち話も彼に対する失敬行為か。
 しょうがない。

「承りましたわ、セーウル様」
「譲歩のつもりか?? 気持ち悪いから即刻やめろ??」
「曲がりなりにも女に対して、気持ち悪いは失礼です。王族が礼儀に反する態度を見せては民への示しがつかないと思います。お父様に叱られますよ」
「も、本っ当ぉ──にヤメテ。お前が姪とか、嘘でも考えたくない」

 開け放たれている馬車の扉に、左肩を預けてぐったりするセーウル王子。
 こちらを見ていたハウィスが、なんとも言えない感じで苦笑いを浮かべ、騎士達が一様に肩を揺らして……笑ってる?
 笑う場面なの、今?

「その辺にしとけ、セーウル」
「ミートリッテさんもです」
「兄上、アーレスト様」

 左側の騎士団に指示を飛ばしていたエルーラン王子と、その傍らで様子を窺っていた見送り役のアーレストが、二人並んで近寄ってきた。
 周辺に居る、セーウル王子以外の全員が慌てて礼を執る。

「確かに、通常であれば、王族以外の方々が殿下方を呼び捨てにするなど、体面上は決して許されません。が、型に填まった対応しかできない人間では周囲に舐められてしまう、というのも事実ですよ」

 私は言われた通りのことしかできません。私からは絶対に動きませんと、己
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