暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 53
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ネアウィック村》を忘れないでいること」
「「「簡単でしょ?」」」

 ドッ……オオオ──ォォン……

 一際大きく、派手な花が月を飾る。
 村全体を揺るがす大迫力に、拍手喝采が沸き起こった。
 三人分の熱にまとわりつかれた体の震えが、どんどん大きくなり……

「……ぁぁああああ、も────────ぅっ!
 忘れるわけないでしょぉおおおおお??
 みんな大好きだよ、ばあああかあああああ??」

 胸に収まり切らなかった想いが、天を貫く。

「だあれがバカよ、誰が!」
「俺も大好きだぜ、ミートリッテー! お酌してー」
「アンタは飲みすぎだよ! 真っ赤な顔して、子供に何言ってんだい!」
「ほらもう、泣かない泣かない。これ飲んで落ち着きな?」
「あ! ダメよ、ミートリッテ! それはお酒ーっ!」

 花火と笑い声と、そして涙声が。
 波の音と一緒になって、温かい旋律を奏でている。

(こんな素敵な音、忘れられるわけがない)

 ネアウィック村で過ごした七年間。
 良いことも悪いことも、たくさん経験してきた。
 楽しいことも、嬉しいことも、辛くて悲しいことも。
 数え切れないほど、経験させてもらった。
 よもや一生分の幸運を使い果たしたのではと、心配になるくらいの幸せを与えられた。

(嫌だなあ、これ。生きてる間に返し切れる自信がないんだけど)

 明日の朝、ミートリッテはここを旅立つ。
 今後戻ってくる機会があるかどうかも判らない、遠く長い旅に出る。
 今度は自分が、みんなを幸せにする為。誰かにこの手を差し出す為に。

(……やれるだけ、やってみるしかない、か)

 規則性が無い音楽の中で。
 子供よりも子供っぽく泣き喚きながら、ぼやけて歪んだ月を見上げる。

 ふと。
 白い羽根が一枚、ふわりと舞い降りて、風に攫われていった。




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