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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 52
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だ。
 それが嬉しくもあり、恥ずかしくもあり、寂しくもあり……

「……〜〜ぅだあっ! ヤメヤメ! 落ち込むの禁止! お役目のことだけ考えてりゃ良いのよ、私は!」

 ぶんぶん頭を振って余計な思考を排除しつつ、下り方面へと歩き出す。
 睫毛に付いた水滴は、欠伸(あくび)をしたからだと思いたい。

 ハウィスの家で目を覚ましてから三日目の今日。
 滞在期限が切れたバーデルの軍人達は、事情聴取が終わるまで密入国達は渡さないと主張するアルスエルナ側に対し、ベルヘンス卿と他数名の騎士を『山荘炎上と警備隊殺害に関する重要参考人』として。
 アリア信仰の大司教二人を、『ベルヘンス卿達の付き添い兼バーデルでの言動見届け役』として伴い、昼少し前に全員帰国した。

 初めは最重要当事者であるミートリッテも連れて行く、と言っていたが、ずっと寝てたからほとんど何も知らないし、説明を求められてもこれ以上は答えようがない。
 第一全身怪我だらけで憔悴してる被害者を国外へ連行するとは何事か?? と、アルスエルナ勢が総出で拒否。
 バーデル王国とアリア信仰では、どちらが社会的な信用を多く得られるか考えるまでもない上、ミートリッテの寝姿は両国揃って確認していたので、あまり強気には出られなかったもよう。

 これがなんと。
 エルーラン王子とそっくりな格好で彼の後ろに控えていた二人の男性が。
 アルスエルナ王国中央教会に務める中央区司教兼大司教のコルダと。
 バーデル王国中央教会に務める中央区司教兼大司教のタグラハンだった。

 お見舞いに来てくれたらしい二人は、ミートリッテと挨拶を交わした後、これぞまさしく好好爺(こうこうや)といった表情で

「結構前から、ウチの子達がなにやらコソコソしていたからねぇ。ちょっと様子を見てみようか? って、友人のタグラハン君と手紙で話してたんだ。そしたら殿下が、ご一緒に観光でもいかが? ちょうどこれから、南方領のオレンジが美味しくなる季節なんですよ……って、お声がけくださってね。大体一ヵ月くらい前になるかなあ? 王都を出たの」
「うん、そうだね。私がバーデルの中央教会を出立したのはそれよりずっと前なんだけどね。陸路は移動に時間が掛かるから困るよ」
「それも観光の楽しみじゃない。いろいろ見て回ったんでしょ?」
「勉強にはなるね。馬車に体力を持ってかれちゃうのが難点だけど」
「ふふ。振動を軽減する車輪と凹凸が少ない道路の整備は今後の課題かな」

 とまあ、なんとものんびり、ゆったりな口調で話していたが。
 要するに、移動距離の関係上バーデルの軍人が入国許可を求めてくる前に王都を出ている必要があったエルーラン王子が、異変を察知していた大司教二人に声を掛け、第一騎士団を動かしても不自然ではない表向きの理
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