第百二話 第二次国境会戦(前)
[9/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
乱軍、陣形を変えつつあります」
概略図上の叛乱軍艦隊を示す三つのシンボルが、微妙に向きを変えていた。敵中央と左翼は我々への迎撃体制をとりつつある一方、右翼は艦隊を二つに分けようとしていた。
「…ほう」
ミューゼル提督は叛乱軍の動きを興味有り気に見つめていた。いくらか上気した顔には笑みさえ溢れている。
「キルヒアイス、このまま前進だ。敵が射程に入り次第攻撃開始せよ」
提督の言葉に参謀長が短く頷く。戦闘開始まであと十分程だろう…提督の率いる複数の艦隊が正面から叛乱軍と戦闘を行うのは、今回が初めてだ。一個艦隊の司令官としては近年稀にみる優秀さだ、だが軍司令官としてはどうか?キルヒアイス参謀長の言う様に、生涯を捧げてよい程の人物なのか?帝国に漂う閉塞感を吹き飛ばしてくれる程の男なのか?俺の胸に沸き起こる衝動を理解してくれるのだろうか…?
15:20
自由惑星同盟軍、第一艦隊旗艦ヒューベリオン、
ジャン・ロベール・ラップ
”なるほど、敵後方に回り込む様に見せかけるのですな“
「はい、後方に下がったミッターマイヤー艦隊…あの艦隊を自由にさせたくないのです。艦隊を二分して貰ったのはその為です」
”攻撃開始後に分けるより手間がかかりませんからな…敵本隊の後方を突こうとする我々を叩く為に反転して戻って来るミッターマイヤー艦隊を、敵本隊に敢えて合流させるという訳ですか。面白い“
「ミッターマイヤー艦隊の動きによっては苦労をおかけすると思いますが…」
“なあに、ミッターマイヤー艦隊は既に七千隻程まで減少しております。さほど苦労するという事はないでしょう…では、移動開始のタイミングだけお願いいたしますぞ”
「ご武運を。では」
そう言って通信を切ったヤンは、再び概略図に切り替わったスクリーンを渋い顔で見つめていた。右翼の第七艦隊、マリネスク提督は戦況を楽観視している、それが気に喰わないのだろう。我々に采配を預ければそれは気楽でいられるだろうが…。
「参謀長、左翼に伝達、敵右翼をもっと押し込む様にと」
「了解…三個艦隊相手はきついな。兵力にそれ程差がないから何とかなってはいるが」
ヤンの命令を下達するのはいつの間にかムライ中佐やパトリチェフ少佐の役目になっていた。俺にはヤンの女房役に徹しろという事だろう。出来る部下を持つと楽なものだ。俺が下達するより厳格を絵に書いた様な中佐がそれをやった方が艦橋の雰囲気も引き締まる気がしてくる。
「敵が現状を維持してくれる様なら、計画通り右翼を前進させようと思うんだが…」
「何だ、自信がなさそうだな」
俺がそう指摘するとヤンはベレー帽を取って頭を掻いた。
「ミッターマイヤー艦隊が素直に敵本隊の援護に向かうか分からない。逆に此方の右翼を牽制しようとするんじゃないかと…そうな
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ