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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
第百二話 第二次国境会戦(前)
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したまま後方に下がる…あまり考えたくない未来図だ。そういう意味からもなるべく一撃で継戦不可能な損害を与えたいが…。
「そうだね。右翼に連絡、迂回は中止、当方の前進を現在位置で援護させてくれ。この後、敵が後退するようなら我々も一旦後退する…艦長、艦をもう少し前進させてくれ」
ラップと艦長が共に了解の意思表示をする…無理は禁物、まだ敵本隊が残っているのだから…。


15:00
銀河帝国軍、ミューゼル艦隊旗艦ブリュンヒルト、
アントン・フェルナー
 
 スクリーンに写し出されている概略図はミッターマイヤー提督の能力の高さをを如実に表していた。劣勢ではあるものの、敵に包囲される事態を巧みに回避し、粘り強く戦っている。
「流石だなミッターマイヤーは。奴にあと五千隻程の兵力があれば、叛乱軍もああも優勢には戦えまい…ミッターマイヤーに連絡…ご苦労だった、後方に下がり再編成し予備として別命あるまで待機せよ」
トゥルナイゼン中佐がミューゼル提督の命令を復唱する中、スクリーンの端に映像通信の画像が浮かび上がる。
「二人共、聞いての通りだ。ミッターマイヤー艦隊の後退を援護する。このまま横並びで二時方向に変針、ミッターマイヤー艦隊を迂回して敵左翼を圧迫する」
直立不動のケスラー提督とメックリンガー提督の映像は、両者の敬礼と共に消えた。司令部指揮所の隅から、命令を発し終えたトゥルナイゼン中佐とフェルデベルト中佐の囁き合う声が聞こえてくる。敵右翼がミッターマイヤー艦隊を痛撃するのではないか…どうやら俺の脇に立つキルヒアイス参謀長にも聞こえたのだろう、二人は早々に参謀長に小声で注意されていた…卿等は参謀です、司令官の意図に疑問がある時は臆せずに質問するように…。
「何かあるのか、参謀長」
「いえ、何もありません」
「フン…二人の言う様にミッターマイヤー艦隊の撃破に固執するような敵共なら、我々も楽なのだがな」
「聞こえておられましたか…敵の右翼がミッターマイヤー艦隊に追い付く頃には敵本隊と左翼は我々に半包囲されているでしょう。特に敵左翼は我々三個艦隊からの初撃を受けます。耐えきれるかどうか」
「となると敵右翼は追撃を中止して引き返さざるを得ないな」
「そうなるとミッターマイヤー艦隊は反転し敵右翼を追うでしょう。結果、敵右翼は本隊と左翼の助勢には向かえません」
「そうなってくれないかな」
「それは叛乱軍にお聞き下さい」
確かに二人の言う通りだ。それにしても、叛乱軍に聞けという参謀長の言葉には笑うしかない。これが普通の司令官と参謀長という関係だったら、参謀長は任務放棄として軍法会議ものだろう。傍目には、キルヒアイス参謀長はミューゼル提督の家臣だが、二人の関係性はそれを大きく超えている。無論、性的な意味ではない。一心同体…表と裏、光と影…。
「叛
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