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幸福侵害
第三章

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「実はなのだ」
「そうだったんだね」
「じゃあお前からは幸福は奪わないのだ」
「それじゃあ誰から奪うのかな」
「幸せを感じている奴からなのだ」
「その時点でだね」
「そうなのだ」
 こう答えたのだった。
「そうしてやるのだ」
「具体的にはどうして幸せを奪うのかな」
「これを使うのだ」 
 今も右手に持っているフォークを見て西に話した。
「そうするのだ」
「悪魔のフォークだよね」
「これでガラスを引っ掻くとどうなるのだ」
「物凄く嫌な音が出るね」
「それを聞かせてなのだ」
 そうしてというのだ。
「嫌な思いをさせてなのだ」
「幸せを奪うんだ」
「そうなのだ」
 西に胸を張って答えた。
「それが私の幸福の奪い方なのだ」
「ああ、それやったらね」
 どうなるかとだ、西はアオイに答えた。
「さっき話したお祖母ちゃん飛び起きるよ」
「そのヒス持ちのなのだ」
「ヒス起こしたら喚き散らしてね」
 またこのことを言うのだった。
「荒れ狂うよ」
「真夜中なのになのだ?」
「関係なくね、近所迷惑も考えないから」
「じゃあ私にもなのだ」
「ヒス起こしたら何するかわからないよ」
 そうだというのだ。
「しかも執念深いから」
「ううむ、厄介な人なのだ」
「ザ=糞婆だからね」
「それがお孫さんの言う言葉なのだ?」
「迷惑しか受けてないからね」
 西は怒った目で答えた。
「そんなので真顔で自分を尊敬しろとか言うし」
「確かに糞婆なのだ」
「その糞婆が来るけれど」
「遠慮するのだ、じゃあもう帰るのだ」
「うん、二度と来ないでね」
「そう言うお前はさっさと幸せになるのだ」
「戦争が終わって迷惑な糞婆と叔父さんがいなくなって巨人が負けたらね」
 こう返すのだった、そしてだった。
 西はアオイを見送った、悪魔はここで彼に窓を通り抜けする前に言った。
「また来るのだ」
「もう来ないでね」 
 西は無表情で返した、そうしてだった。
 悪魔を見送った、悪魔はそのまま窓を抜けて夜の中に消えた、西はそれを見届けるとゲームを終えてだった。
 その日は寝た、そしてその厄介な叔父を嫌悪に満ちた顔で見送り祖母を同じ目で見た。そして戦争のニュースを見てうんざりした。だが気を取り直して学校に行って友人達と話して食堂の定食を楽しんで部活にも出た、そして祖母は嫌だったが両親と一緒に夕食を食べて風呂に入りゲームをして寝て巨人が負けたと聞いて笑顔になった。そうして満足して寝たのだった。今の自分は幸せではないが不幸でもないと思いつつ。


幸福侵害   完


                   2024・7・14
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