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金木犀の許嫁
第四十六話 鯨を食べてその十一

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「駿府城に行ったのです」
「幸村公とですね」
「十勇士の方々と」
 それにというのだ。
「又兵衛公、大助公も含めて」
「十三人ですね」
「そして服部半蔵さんと戦い」
 幕府に仕えた伊賀忍軍の棟梁の彼と、というのだ。
「家康公にその力を見せて」
「家康さんを討ち取らなかったですね」
「戦は終わり秀頼公もご子息も見逃してくれたので」
「その恩で」
「命は奪わず」
 いえやすのそれをというのだ。
「半蔵さんに勝って」
「それで終わったんですね」
「そうでした」
 こう話すのだった。
「駿府城を攻めても」
「そうでしたか」
「そして薩摩に戻られて」
「何か世界中旅されたそうで」 
 白華が言って来た。
「幸村公とご先祖様達は」
「そうでした、十年以上世界各国を巡り」
「色々冒険もあって」
「そして薩摩に戻られました」
「そうでしたね」
「このお話も史実には書かれていませんが」
 それでもというのだ。
「世界各地で冒険と戦いを送り」
「物凄くお強くて」
「主従一人も欠けることなく冒険の旅を行い」
「薩摩に戻られて」
「余生を過ごされました」
「そうでしたか」
「幸村公は還暦を過ぎて亡くなられたそうです」
 そうだったというのだ。
「そして代々薩摩で過ごされ」
「明治になって、ですね」
「主従でこちらに来ました」
「神戸に」
「そして八条財閥で働き」 
「今に至りますね」
「左様です、かつては大坂や高野山、薩摩で主従暮らし」
 そうしていてというのだ。
「今は神戸で」
「それぞれのお家がありますね」
「最初は上田ではじまり」
 信濃、今の長野県からというのだ。
「流れ流れですね」
「今は神戸ですね」
「左様です」
「あの、何か」
 夜空は幸雄の話をここまで聞いて言った。
「流れ流れてといいますと」
「織田作之助さんの小説みたいですね」
「あの人も作品も流れ流れですね」
「放浪しますね」
「多くは大阪の中で」
 この街を舞台にしてというのだ、織田作之助は大阪に生まれ育ち生きて来たので作品の舞台も同じであるのだ。
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