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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第二話 姉妹
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定な高い木の枝の上にいるというのに、今は自分でも驚く程落ち着いている。
 余りにも心地よく、気が遠くなりそうな中、ふと気が付くと、自分の顔がゆっくりと彼の胸元に向かいだしていた。
 耳に彼の厚い胸板が当たる。
 とくんとくんという穏やかな鼓動が聞こえてきた。
 顔に風が吹き掛かる。
 冷たい風の中に、微かに熱く湿った不思議な匂いが混ざっていた。
 それは虎や熊のような獣の匂いに似ているようでいて、それでいて、父親が付けているコロンの匂いにも似ている……でも、そのどちらでもない不思議な匂い。
 ただ……嫌いな匂いじゃなかった。
 いや、それどころかずっと嗅いでいたとさえ思ってしまうほど……。
 それ(・・)が一体何なのかわからないまま、匂いに誘われるまま顔が動き、

「……カトレア、すまないがくすぐったいんだが」
「……っ……ん……ん? え? あっ?! す、すいませんっ!?!」
「っうおっ?! 危ない暴れるな! 落ち着け!」
「あっ……は、はい……」

 士郎の首元に顔を押し付けていたカトレアに士郎が声を掛けると、カトレアは半分寝ていた意識を一瞬にして覚醒させた。自分が何をやったのか気付いたカトレアが、反射的に士郎の胸板を両手で勢い良く押し離れようとしたが、ここは木上、落ちたら大変だと士郎はカトレアを更に強く抱きしめる。
 強く抱きしめられ更にパニックになりかけたカトレアだったが、士郎の言葉に我に帰り、徐々に落ち着きを取り戻していった。

「急にどうしたんだ?」
「……あ、そ、その……な、何でもありません……」
「……そう、か」

 真っ赤な顔で俯き呟くように答えるカトレアに、士郎も小さく頷く。
 またもや二人の間に沈黙が落ちる。しかし、それは先程のものと違ってどこか居心地が悪い。
 その沈黙を破ったのは、カトレアだった。
 カトレアは俯いていた顔を上げ、草原のように広がる森を見下ろすと、頭の上にいる士郎に向かって顔を向けず声を掛ける。

「シロウ……さんは、なぜ……嘘をついたんですか……」
「嘘……とは?」 
「小鳥が怯えるといったのは、嘘ですよね。なぜ、そんな嘘を」
「ふむ……」

 カトレアの言葉に、士郎は朝日に照らされだした森を眺め、

「……まあ、ただの自己満足だ」
「自己満足……ですか?」
「あ〜……その、だな。君から雛を渡される際、君がどこか寂しげな顔を浮かべていた気がして……な」
「寂し、そう……ですか」

 士郎の言葉に小首を傾げてみせるカトレアに士郎は苦笑いを浮かべ。

「まあ、俺が勝手にそう思っただけだ。もしかしたら、自分の手で返したかったのではないかと思ってな」
「……それだけで、わたしを抱えて木に登ったというのですか」

 カトレアは、自身の手を
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